【内容紹介】
神が現れ、国ができ、天皇の歴史が始まる−。奈良時代の初頭に誕生した、現存日本最古の書物である「古事記」。その中から著名な物語の現代語訳と原文の訓読文を掲載し、全体の流れを追いながら読み進められるよう編集。
日本最大級ネット書店のイーブックオフ
【感想】
オンライン書店ビーケーワン
物事は常に枝道・脇道・獣道。堂々と横道に逸れまくる管理人とブログで申し訳ありませんが、本日は古事記の感想を(邪な方向から)認めさせて頂きます。毎度の事ながら長いので、お暇な方のみどうぞ。
底の浅い人間がいきなりインテリ振った所で、底が浅いと言う根本そのものに変化が無ければ無意味なものとなりますが、それはさておき、これに手を出したのには訳があります。耽美・BLを読んでいると、古事記や日本書紀の日本神話に絡んだ話がゼロでは無いのですよね。当ブログで感想を取り上げたものの中では、「
BL新日本史」に「
異神の杜」。そして「
妖都」に「
邪神記」が主な所。
古事記と言えば、学生時代に教科書で出会うものではありますが、ナマクラな勉強しかしなかった管理人がマトモに取り合っているはずもありません。試験対策に表面だけを軽く摘んだら終わりと言う有様。テキトーな人間なものだから、良い年こいした今になってもアレな感じで生きている訳です。学生の皆さん、勉強は強いられている内が花です。そこできっちり土台を固めておけば、100%とは言い切れないものの、自分の将来を選定する際に有利に働く事があります。学が無いよりはあった方が、目的・目標が生まれた時の一手をかけ易いです。嫌でもマゾになったつもりで、「これはプレイだ」と自分に言い聞かせつつ、勉強をなさって下さいね。
毎日が反省会。そんな残念な大人の後悔話もありますが、この古事記。訳者の方のセンスも過分にあるかと思いますが、非常に面白い。「日本神話を読んだ後に古事記を読むと笑える」と言う話を耳にした事はありますが、私は古事記単体でも笑いました。古事記は上中下巻の三巻に分かれる物語で、上巻は天地の始まりから神々の誕生、国土の生成を経て、地上世界の主となる天皇の祖先が天の世界から降臨した経緯が綴られます。神武天皇から始まる天皇の血筋を追った中下巻とは違い、丸々一巻が日本神話。
おおらかと言うか、おおらか過ぎると言うか、真剣に考えると「それは無いぜ」と突っ込みたくなる要素もチラホラ見られたり、時々には血筋の時系列すら無視をされた、世代間の垣根を簡単に破って結婚が堂々と成り立ってしまっていたりと、凄い。
性別の無い神が存在する事が殆どである中、初めて男と女と言う性を持ったのが伊邪那岐命(いざなきのみこと)・伊邪那美命(いざなみのみこと)。国生みをした日本の始祖でもある訳ですが、初めに国生み・神生みを始める際に、日本で始めての男尊女卑と差別・淘汰が行われています。この当たりは薄暗い話になりますね。
淤能碁呂島(おのごろ島)に降って国生みをする際には、
伊邪那美命:「私の身体は成り整ってまだ合わない所が一箇所あります」
伊邪那岐命:「私の身体は成り整って余ったところが一箇所ある。この私の身体の余分な所でお前の身体の足りない所をさし塞いで国を生もうと思う。生むことはどうか」
伊邪那美命:「はい、それで良い」
物凄くアバウトな対話から国生み・神生みが始まりますが、天の御柱のまわりを巡ってから寝所で交わりをする際、妻である伊邪那美命が先に決め事を口にしてしまった。御柱を回って交わす言葉は、お互いを美しいやら愛しいやらと褒め称えるバカップル的な甘言ですが、その後授かった初めての子供が水蛭子(ひるこ)。「島足り得ない、ぐにゃぐにゃのもの」として生まれてしまった。
そこをこのバカップル夫婦と来たら、折角の初めての子に不具合があったとは言え、葦の船に乗せて流してしまうのですよね。非情と言うか何と言うか、冷静に考え無くても酷い話です。水蛭子の次に授かった子は、淡島(島足り得ない、あわわとして頼りないもの)ですが、この子もまた、子の数には入れられなかった。二人続けて不具合のある子を生んだ夫婦は、天つ神に相談。「女が先に言葉を言ったから良くないので、次は言い直しなさい」と言われる。寝所で交わる前に女から男に甘い言葉を吐いてしまった事で不具合の子が生まれてその子を捨てたと言う内容は、書物として残されているものの中では、日本最古の男尊女卑と差別・淘汰と言えそうです。
因みに、流されてしまった水蛭子(または「蛭子」)は無事に生き伸び、後の「エビス様」とされていますが、諸説が色々ありますね。とは言え、良く聞くパターンは、流された水蛭子が生き残って出世をした説。この説の場合、水蛭子→エビスとなって出世をした事実を知った伊邪那岐命と伊邪那美命が、改めて子の数に数え直します。それだけを考えると酷い親ですよ。とは言え、こう言う事と言うのは、当事者にしか判らない事ばかり。実際に不具合を持つ子供を持ってしまった親にならないと、その心を知る事は出来ません。
しかし、子供を持とうとする人は簡単に子供を持っては行けないと言う事だけは言い切りますよ。子供を持とうとする人は、「どんな子供が生まれても自分の子だ」と言う覚悟を持ってから妊娠・出産に臨むべきだと思います。妊娠をしただけで「100%健全な子供が生まれる。自分は絶対に安全に出産をやり遂げられる」と決めつけながら、禁酒も禁煙もせずに夜遊びも止めない。そんなスイーツを目にする度に、「経験してみないと解らない事、判明しない事が多いのだから、全てを事前から過信しては行けない」と思ってしまいます。本当にねえ、妊娠中を無事に過ごし、無事に出産を終え、子供が無事に育つ事ってのは、それだけで奇跡的な事だと思うのですよ。人一人を生み出し、育てると言うのには、覚悟も気力も経済力も必要です。生んだ責任・育てる責任はもっと必要です。お人形を増やすような感覚で子供を生もうとする方を目にする度に、おばちゃんは嘆きたくなります。
そんな私情はさておき、伊邪那岐命と伊邪那美命は夫婦であると共に、兄妹でもあります。近親者同士の結婚で生まれた子供に劣性が現れ易いと言う事の最初の警告的なものなのかも知れませんが、おおらか過ぎる程におおらかさを感じる伊邪那岐命・伊邪那美命カップルの結婚生活は、薄暗い要素も多いですね。水蛭子は捨てても、「一つの身体に四つの顔を持つ子=四国」は捨てられる事も無く、子供として認められていますから。グリム童話に残酷さを見る動きが暫く前に盛り上がりましたが、日本神話も負けてはいないと思います。
水蛭子に関しては、「異神の杜」「妖都」等、耽美やBLの両性具有ネタに絡められる事がありますが、「定まらない」と言う事が、物悲しさや神秘的なものを助長し易い為、重い話に使う程に盛り上がり易いと言う事もあるような気がします。
「妖都」で登場する両性具有においては、水蛭子が再生を繰り返した存在でした。両親も伊邪那岐命・伊邪那美命で確定されているのですが、この辺りが「自己再生を繰り返す」事に、強い意味を持たせている気がします。両親が作り出した世界を混沌に陥れて、「復讐」を達成しているかのようにも見えるのですよね。両性具有で生まれてしまった事の意味合いは大きく、自分を完全の存在だと認識しながらも、男女どちらか一つだけの完全では無い性でもありたかったのかしら?等とも思えてしまったり。詳しくは感想記事で言及していますが、「定まりのない性を持つ事で定まっている」と言う、ある視点から見ると「男女の両性を持った完全体」でもある訳ですが、完全と不完全は紙一重なのですよね。捉え方次第ではどちらにも転びますから。その辺りを突き詰めようとすると、どうしても堂々巡りになってしまい、「最後は受け取り手の好みの問題」と言う所に落ち着かせるしかありません。堂々巡りをしながら考える事も、この手の要素を好む人間には面白い要素になる訳ですけれども。
両親も伊邪那岐命・伊邪那美命で確定されていて、
定まらないと言えば山藍先生の「邪神記」を読んだ際、そのあまりのスケールの大きさに卒倒したものですが、ベースに深く関わる日本神話そのものがスケールのデカイ話なので仕方がありません。受として登場する「ミワ様」は、日本神話の三輪(三輪山)から取られているのでしょうね。
三輪の祭神は、大物主神(おおものぬしのかみ)。この娘・伊須気余理比売(いすけよりひめ)は、神武天皇の妻です。古事記での大物主神は、蛇の姿をして活玉依毘売(いくたまよりびめ)の元に通い、日本書記では、蛇の姿をして倭とと日百襲姫命(一部漢字が出ませんが、やまとととひももそびめのみこと)の元に通っています。この話から、三輪の神は蛇体と考えられているそうですが、「邪神記」のミワ様も蛇体でした。登場初期は邪悪な三貴神(これは山藍先生オリジナル設定)の一人でしたが、途中からは「これぞ山藍作品の受」な存在となっていました。女性の元に通う所か、男に狙われまくっていますからね。(笑)
そして話は戻りますが、建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)周辺も凄いです。両親(伊邪那岐命・伊邪那美命)が破天荒なので、それから考えると珍しいとは言え無いのでしょうが、自分の数代後の子孫と自分の娘を結婚させる事もあります。時系列を気にする方がバカバカしくなる程のスケールです。日本神話ってのは、かなりの和モノSF世界のような気がして来ました。突っ込みたいけれども突っ込んでは行けない、突っ込んでも良いけれど突っ込んだ所で負けるかのような気がするトンデモな展開が多いのですよ。
散々バカップル振りを発揮していた伊邪那岐命・伊邪那美命夫婦の顛末もそうです。
砂を吐きそうになる程に甘事を吐き続けた愛する妻の伊邪那美命が、火の神を生んだ際、女陰を焼かれて病み臥せって亡くなります。産道を通す時に焼かれてしまったとは言え、「子宮にいる間は大丈夫だったのだろうか?それとも、伊邪那美命の子宮は宇宙規模の何かに守られていたから、無事に火の神を子宮で育てる事が出来たのだろうか?」等と余計な事を考えたものの、兎に角まあ、黄泉の国に立ってしまった訳です。愛する妻を失った伊邪那岐命は、伊邪那美命を連れ戻す為に黄泉の国に追いかけて行った。しかし、変わり果てた妻の姿に恐れをなして逃亡。妻から逃げ切る為、黄泉の国と葦原中国の間にある坂を塞いでしまった。
この際の夫婦の会話がアレで、伊邪那美命が本当に可哀相ですよ。伊邪那美命の物騒な恨み言だって切ない。神話なので仕方が無いでしょうが、伊邪那岐命って人は結構、亭主の風上にもおけないような行動を取ります。しかしちょっと不思議なのは、伊邪那美命が黄泉の国に旅立った後にも子供が生まれている事です。物凄くファンタジー過ぎて、どうしようかと思ったのですが、後に二人の子である天照大御神と建速須佐之男命が、物騒な「うけい」をした際にも子供が生まれていますから、男女の性を分けた必要性が判らなくなります。(苦笑)
因みにこの「うけい」は、一応は「言語呪術」とされていますが、天照大神と建速須佐之男命が見せた「うけい」は言語呪術の域を軽く超えています。
事の発端はアレです。弟である建速須佐之男命が、「亡母(伊邪那美命)の国に行きたい」と駄々をこねた事。お父ちゃんである伊邪那岐命大御神(建速須佐之男命が生まれるまでには沢山の国生みと神生みをしていて、すっかり偉い人になっています)はそれを突っぱねます。しかし諦めきれない建速須佐之男命は、姉の天照大御神を訪ねるんですね。
しかし、お姉ちゃん・天照大御神は、「弟には何か邪心があるのでは?」と疑った。建速須佐之男命は他心は無いと口にする。そしてそれを証明する為、二人で「うけい」を始めます。物凄い姉弟ですよ。建速須佐之男命の心に邪なものが無いかを知る為に、姉弟で「うけい」をして子供を生みますからね。近親相姦云々では無く、言語呪術としての「うけい」で夫々に子供を生みます。この辺りでも、「性別、意味無いわ〜!」と突っ込んでしまいましたが、スペクタクルが標準設定なので文句も言えません。
取り合えず、夫々に子供を生みます。まずはお姉ちゃん・天照大御神の子生みが凄い。建速須佐之男命の腰に帯びた十拳の剣(とつかのつるぎ)を使い、三つに打ち折り(女性ながら相当な力の持ち主ですね)、高天原の聖なる井戸で振り漱ぎ、それを噛みに噛んで吐き出した息から五柱の男子(神)を生みます。吐き出した息から子である神を生む事はさておき、刀を折ってそれを噛みに噛むと言う行為中、口腔内が血だらけにならなかった事が凄いです。力技ファンタジーですね。神様は何でもアリです。
対する建速須佐之男命は、天照大御神の御みずらに飾っていた勾玉の髪飾りを使い、それを噛み砕く。天照大御神同様に、吐き出した息から三柱の女子を生む。
ここで姉弟の決着はつくのですが、その理由が凄い。「俺の心が綺麗だから女の子を授かった。だから俺の勝ちだ」ってな具合です。無理矢理過ぎる理由とは言え、女子を三人生んだ建速須佐之男命に軍配が上がりますが、アグレッシブに剣を噛み砕いた姉・天照大御神の方が、子供を生む前に勝っている気がするのは私だけでしょうか。(笑)
これ以降、調子に乗った建速須佐之男命が暴走。ビビってしまった天照大御神が天の石屋に隠れてしまうエピソードに発展しますが、天の石屋に引き篭もった天照大御神を引っ張り出す為に尽力した、天宇受売命(あめのうずめのみこと・髪飾りをした巫女神)は最強で最大の功労者だと思います。性ながらに自らを辱めるかの如くの、文字通り身体を張って神々を笑わせた展開にはド肝を抜かれます。
天の石屋前で神々の笑いを取り、その笑い声を気にして天の石屋から天照大御神が顔を出した所を引っ張り出す作戦ですが、天宇受売命が自ら乳を曝け出し、裳の紐を股座までおし垂らして笑いを取る訳です。現存する書物に記された最古の女芸人ですよ。巫女で芸人ですよ。おおらかと言えばおおらかに描かれていますが、恥辱に塗れても笑いを取りに行く、身体を張った天宇受売命の心意気にグっと来ました。
こんな感じでまあ、沢山の神の話が読める一作となっています。
神話と言う事もあり、固有名詞がイチイチ長い人物名ばかりで、全編が「寿限無」の領域に踏み込んでいるような錯覚すら覚えますが、「さっきもこの漢字の羅列を見たわ」位の勢いで、記号的な捉え方をして読んでしまっても大丈夫だと思います。出来れば全ての人物名を的確に覚えた方が楽しめますが、余程の神話スキーや勉強家の方で無い限りは、確実な把握は難しいような気がします。しかし雰囲気さえ掴んでしまえば、私のように学が無い人間でも楽しめる仕上がりでした。
人生(神生か)の悲喜交々。単純に豪快なトンデモファンタジー的に楽しむ一方、人生の教訓となりそうな話まで盛り沢山の内容で充実している作品でした。殆どがBLとは関係の無い方向からの感想になりましたが、たまにはこう言うものを読むのも良いものです。
古事記 日本の古典をよむ・1 (bk1)
★可愛いレンタルサーバーLOLIPOP!
⇒ ハスイ (11/22)
⇒ 月子 (11/21)
⇒ ハスイ (10/23)
⇒ 椿 (10/23)
⇒ ハスイ (10/19)
⇒ ハスイ (10/19)