【あらすじ】
中学の頃から想い続けた相手は、不吉な死の影を纏っていた―。霊能力を持つ歩が引っ越したアパートで出会った隣人は、中学の同級生・西条希一。昔も今も霊現象を頑なに認めない西条は、歩にも相変わらず冷たい。けれど、以前より暗く重くなる黒い影に、歩は西条の死相を見てしまう。距離が近づくにつれ、歩の傍では安心して眠る西条に、「西条君の命は俺が守る」と硬く胸に誓うが…。
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【感想】
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タイトルの「不浄」を目にする度に、定番の不浄解釈に併せ、「御不浄=トイレの丁寧語」を連想して仕方が無い管理人です。早速すみません。
さて。
そろそろトンチキ祭を止めてフツーのBLを読もうと思って手に取りましたが、結構なトンチキ系の話でした。
受が霊媒体質の”見える人”で、攻に取り憑いている影を払いたいと考える。しかし家系に因縁を持つ攻は、”だからこそ”霊的なものを信じたがらない。そうこうしている内に攻は、霊的なアレコレや女のストーキングに巻き込まれる。受はどれだけ煙たがられても、攻の周りをうろついて攻を助けようとする―。
もんの凄く大雑把なあらすじはこんな感じです。
先に触れているように、受は霊媒体質の持ち主。これは破戒僧系のお父ちゃん譲り。坊主頭に無精髭な元坊主・現霊媒師のお父ちゃんにグっと来ましたが、そんなお父ちゃんの息子だとは思えない程の、受の猛禽ワンダフル花畑ワールドに卒倒しました。裏表紙のあらすじを読んだ際には、「霊媒ミステリーかしら?」等と考えたものですが、結構なトンチキ霊媒ものでした。
攻が悪い霊的なものに憑かれていたり、電波系女のストーカーに狙われる辺りは確かに怖いのですが、猛禽系(走れば転び、ハリウッド映画で泣きそうな天然系。しかし狙った獲物は逃さない)な受の天然振りには度肝を抜かれました。
攻との出逢いは中学時代に遡り、とある事情で別れた。ただの同級生から関係が変わるのは、9年後に再会を果たしてから。あまりにナヨナヨした受を心配したお父ちゃんが、「世間に揉まれて来いや〜・・・!」と一人暮らしをさせた所、うっかり攻の隣の部屋に引っ越す。ここにはお父ちゃんの霊媒師としての目論見もありますが、決して息子をホモにするつもりではありませんでした。
それにも関わらず受はホモに目覚めてしまう上に、その天然振りが凄まじい。24歳で初めての一人暮らし初日。不安を覚えては「あーおうちに帰りたいよー」と嘆くわ、再会した攻と親交を深める際には、次にいつ逢えるかと気にして攻に「(お前は)彼女かっつーの」と突っ込まれ、それでもめげずに、「今週の日曜日に公園に案内してくれない?」と言い出し、腹部にフックを入れられつつ了承して貰ったり。
公園に出かける際には手作り弁当用意。公園では「あーお花がきれいだねー」と言い出す始末。更に親交を深めると食事も作るようになり、「男は胃袋で掴め!」を無意識的に実践。ちゃっかり餌付けに成功しています。攻にキスをされた後には、その際の状況を思い出しながら、身悶えして床をごろごろ転げまわる有様。受の凄い所は、「転げまわりそうになった」ではなく、実際に「転げまわった」事。攻のものを初めて直視した際にも、「お父さんのみたい」と言ってしまう無邪気さがあったり(それによって攻も半笑いになったり)、ここまで徹底していると清清しいです。
しかし、攻を執拗に追い掛け回す女ストーカーにも直接対決を挑んだり、攻に対しては一生懸命。自分の力が及ばない時にはお父ちゃんの力も借りてと、ちょっと他力本願系ですが健気です。
頭のネジが、軽く一本以上は吹っ飛んでしまっているように見える系の天然ちゃんは、夜光先生の作品には珍しくありませんが(「凍る月〜」シリーズの受もこれ系ですし)、今回の受の天然ちゃん振りも凄かった。(笑)
勿論、突っ込み所は攻にもあります。朴訥系で厭世的な男前ですが、家系の諸々が原因で人間関係はドライ。美形でモテるので、寄って来る女には事欠かないものの、適当にやれれば良いと、後腐れの無い女を選ぶ。中には勘違いが行過ぎた電波系まで引き寄せてしまっていますが、そこから霊的なものに発展するとは露知らず。自分の周囲に不気味な事が起こっていようが、それを霊的なものだとは信じたがらない。ストーカーにすら怯まない強さや、意識的に他人を排除し易いクールな部分があるものの、ツンデレや萌えと言う言葉を知っている辺りが何とも言えません。(笑)
そして静かに突っ込み所があるのは、攻に絡んだ女達。匂いに敏感な攻は、真っ最中であろうが、好まない女の匂いには萎えてしまう。中折れした攻に対して、女が立ち去り際に投げ付けた言葉のひとつが、「死ね、イ○ポ野郎!」。電波系ストーカーの女も、攻と受の関係を知った際に攻に投げ付ける言葉のひとつは「死ねホモ!!」。
こう。
女が逆切れを起こして暴言を吐く事は、たまにはありますが、二人の女が似たパターンで逆ギレ怒鳴りつけハンターをするのには、ちょっと後味が悪かったですね。真っ先に「死ね!」と言う言葉が口を吐く事で、暴言が幼稚過ぎるような気がしました。ストーリーを盛り上げる為に逆切れは必要かも知れませんが、苦し紛れや負け惜しみの入った暴言にしても、もう少し頭を使った言葉の言い回しをして頂きたかった。そんな次元でしか反論の出来ない女と関わり続ける事で、攻の価値まで下がって見えるのですよ。
ストーカーの描写にしても、完全に自分の世界が構築されてしまっている。その辺りは良いのですが、残酷な動物虐待を正当化して実行している以上、心の闇がグズグズに溢れ出ているような掘り下げた描写も無しに、表面的な所だけを描かれると、只の悪趣味さが漂ってしまう。「ルシファー」発言には思わず吹きましたが、彼女に関する所には、うっかり笑ってしまうシリアスな要素は要らなかった。笑わせるつもりで書かれてはいないでしょうが、和寄りの霊媒展開の中にあり、妙なズレと違和感を感じて笑ってしまいました。最後にルシファー云々を取り入れるのであれば、最初から和洋折衷の霊媒系で突っ走っていれば不自然では無かったのかも。
これは個人の好みの問題なのですけれども、動物虐待やストーキングの手口が執拗で残酷なだけに、主観を中心にちょちょいっと取り上げて片をつける要素では無かった気がします。初登場から恐ろしげな扱いではありますが、折角のホラー要素の背景がある事ですし、作中のあの状態に辿り着くまでの経過を目の辺りにしたかった。マニアックな希望で申し訳ありませんが、全体的にもう少し、シリアスな部分に突っ込んで頂きたかったですね。霊媒的なものが重要な作品だけに、(野阿先生の「
ミッドナイト・コール」程では無いにせよ)霊媒大戦的な所も期待したのですが、そうした展開が無かった事も、これも個人的な好みの問題ですが、少々残念。
兎に角受がもんの凄くウザ系でぽや〜んとしている子なので、攻ももっと傲慢で堅い人でも良かったかも。受の影響で毒気を抜かれるのは仕方が無いにしても、もうちょっと温度差があった方がメリハリがあったかしらとも。
シリアスな部分や霊媒的な所はもう少し突っ込んで欲しかったのですが、ホラー系コメディーとしてはアリかしらと、そんな事を考える読後でした。
【追記余談】
妄想が入ったアレな余談ですが、お父ちゃん主役の霊媒ホモがあったら読みたいです。妻はとうに亡くしていますし、息子がホモになっても割とアッサリ受け入れていますし、衝撃的な出逢いさえあれば、結構アッサリそっちの世界に飛び込める人材のような気がします。元は僧侶なのに破門をされて(その理由が明らかではない事も気になります)、勝手に霊媒師を始める破天荒振りも気になりますし、BL界に転んでくれれば面白い存在だと思うのですよねえ。派手に霊と闘ったり、霊媒戦術で相手をモノにしたり、または依頼者とうっかり懇ろになってしまったり。総攻めが理想ですが、まさかの受でも面白いかも知れません。何にせよ、破天荒に暴れまわってくれたら、物凄く盛り上がる気がします(私が)。
不浄の回廊(bk1)
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