【あらすじ】
「あなたはこの幸運を受け入れた方がいい。ほんの数時間で苦しみから解放される」製薬会社ヨーゼアに勤める叶野史生は、妄想癖のある熱心な研究員だ。ある秋の夜、いきなり見知らぬ外国人が家を訪ねてきた。褐色の肌に端整な容貌の彼、グレッグ・メイヤーは、初対面にもかかわらず、叶野の持病を自分に治療させるよう主張してきた。いったいどうして?わけがわからず怯える叶野をグレッグはなんとか説得しようとするのだが、叶野が偶然つくりだしたある薬のせいで事態は思いがけない展開になり…!?傷つきやすい大人たちが手に入れた真実の愛とは―。
日本最大級ネット書店のイーブックオフ
【感想】
@古本市場
わああーッ!希望だわ!生きる希望よ!生きる希望が湧いて来るわ・・・!!!これ程までに生きる希望のモトのような小説があったであろうか。私は、のけぞり、のたうち、絶叫しつつこの力作を読み終えたのであった・・・。
さて。
冒頭から痛いと言うべきか可哀相と言うべきか、兎に角まあ、派手に取り乱して申し訳ありません。判る人にしか解らない、「
小説道場 I」の中島御大が名誉一級に上げた投稿大傑作、「影人たちの鎮魂歌」に向けた絶叫を、ほぼそのまま
パクり引用してしまう程に取り乱しました。
自称・トンキワ(トンデモ・キワモノ)会所属のひとり相撲に従事しているこの頃ですが、破壊力抜群のトンデモ・キワモノ系に、まさかここで出逢えるとは思いもしませんでした。見事な程の「トンチキ」ですが、正直な話、滾りました。
兎に角まあ、見事な程に金を無駄に使いまくる組織、「アーサーズ・ガーディアン」が目指す「恒久的な平和」が、本来の意味に見合った有意義な何処にも向かっている気がしないままでスタートし、金の無駄遣いが鼻についてアレな
1作目、おぼこ鬼軍曹とジャングルスマタ(洞穴方式)に悶えた
2作目。そして3作目の衝撃、そして笑撃。
1作目をアイドリングとすれば、2作目で走行開始、3作目でトップスピード、4作目で怒涛の展開を期待していましたが、3作目でこれだけのテンションとインパクト達成は如何なものか。4作目の作家さんは大変ですよ。そんな心配が出てしまう程に、この3作目の破壊力は相当なものでした。
前振りだか前置きだかが長くて申し訳ありませんが、こんにちはトンデモ、ありがとうキワモノ。いらっしゃいトンチキ。兎に角まあ、これ程私の心を震わせ、喜ばせしめたトンチキに出逢えた事が嬉しいです。読者は自分本位で作品を楽しむもの。傲慢極まりない上に喜び所を間違えている気はしますが、そして人としての道からも外れてしまっている気もしますが、されど腐女子。腐心を充溢させてくれる作品に出逢えれば、それで良いのです。
あらすじを目にするだけでは、言い切ってしまいますが陳腐なBLに思います。ところが、このあらすじには裏がある。裏打ちされたメタファーの内容には「まさか・・・!」と言う思いと、「とうとうやって来たわね。この時が・・・!」と言う思いで踏ん反り返りました。
総てのゲイがア○スを使った性行為をしているかと言えば、そうでも無い。しかしBLでは、「使ってこそナンボ」。数巻に渡った焦らしプレイが見られる作品(「FLESH&BLOOD」や「吸血鬼と愉快な仲間たち」等)もあるものの、基本的には「使ってナンボ」。
そこに関する医師が登場しても、まあ、珍しい事ではありません。過去にもア○スに関わる肛門科医師が登場した作品には、猫島先生の「
絶対服従メディカルプレイ」や、「
エロとじ」収録・山藍先生の「多岐川肛門病院の秘密(四文字熟語エロ。あの作品を目にした衝撃、そして笑撃は今だに忘れられません)」等がありましたが、今作の攻め医師(2作目にもチラっと登場したグレッグ・メイヤー)はアレですよ。
別に肛門科を専門としている訳ではありませんが、アーサーズ・ガーディアンからの指令によるミッションで、
受の痔の手術を行う為に来日しちゃう訳です。「ありそうでなかった話が二次元で現実になった」のが今作。思わず私、心の中でガッツポーズを決めました(本当に申し訳ない)。
大半のBLに登場する受と言えば、その辺りの持病持ちが居ても良さそうなものですが、どの受も締まりは良いのに伸縮性が豊かなせいか、多少手荒に扱っても痔主になる事は殆どありません。稀に、一時的に傷付いて攻に手当てを施される受はいますが、攻に手術を施される受には初めて遭遇しました。
製薬会社の研究員で妄想癖のある美メガネ・叶野は万年痔主。12年越しの片思い中で経験はゼロ。密かな夢は恋人とねずみのテーマパークに行く事。妄想癖のあるヘタレ美メガネの乙女スイーツ系です。突然目の前に現れたグレッグから、叶野が「痔を手術させてくれ」と言われるトンチキ展開にもグっと来ましたが、この二人の恋愛過程もおかしかった。(笑)
笑いあり、シリアス(攻と受の肌の色に関するコンプレックス等)ありの展開ですが、兎に角まあ、叶野の妄想が凄い。いざ妄想モードに入れば、かなりの桃色パンチ。諸事情で現実と妄想の区別がつかなくなってしまった際の妄想桃色タワーは凄い。
不幸な形で長い片思いに破れた叶野がグレッグに惹かれるものの、グレッグの性趣向は到ってノーマル。グレッグが叶野に対して興味を持つ事と言えば、ミッション課題である「痔の手術」のみ。しかし叶野と言えば、勧められる程に手術を拒み、グレッグを意識し始めてからは報われない恋を痛感。挙句の果てには、医療目的の為に執着される自分の尻にまで嫉妬をする。これがまあ、哀れで滑稽です。うっかり笑ってしまう。
先にも「諸事情」と言葉を濁した部分には、叶野が個人的に研究していた「KOCHO」に関するトラブルが絡んでいます。ボートの上で叶野が妄想と現実が曖昧になってしまった際には、「普通の攻なら、流されちゃうよね」ってな所で、自分を寸止め海峡に追いやったグレッグの精神力の強さも眩しいです。必要があれば「国境無き医師団」の一医師として世界を飛び回る優秀な人物が、休暇を兼ねたミッションで痔の手術の為に来日。
それだけでもおかしいのに、受が手術を受けるのか否かの問題も長らく決着がつかず笑いました。この辺りにも前作、前々作程では無いにせよ、無駄に金がかかっている訳ですが、そんな無駄使いを払拭する位に、今回の攻は生真面目で優しい人でした。叶野が日本人特有のはっきりしない性格の持ち主で、そこに対して苛立ちを覚えたりする事はあるものの、うっかり発見してしまった叶野のコレクション(アレなDVDですよ)に対する真摯は発言は素晴らしい。(笑)
「趣向は個人的なものだから、あなたがそれで興奮するなら×××で顔を叩くぐらい造作もない」
そんな事まで言い切ってしまう辺りは漢です。ちうか、アレですね。このカップル、同じ年齢(32歳同士)ではありますが、グレッグの方が遥かに年上に見えてしまう。コンプレックスも持っていて、それなりに辛酸を舐めて来て、受と比べると遥かに大きな経験をしてきているせいもあるでしょうが、同じ年齢の受を相手にしながらも、敬って「あなた」と呼ぶ腰の低さに萌えました。BLの攻ってのは、受と関係を持つ頃になると呼び方を変えるパターン(敬称を省いて呼び捨てにしたり)は良く見られますが、グレッグは、叶野と関係を持った後の方が、敬いや優しさの度合いが増えた気がしました。とは言え、濡れ場に入れば「先だけ」と言いつつ全部入れていましたけれども。(笑)
二人の関係が大きく動くのはクリスマスだったりと乙女スイーツ度も高い。シリアスな所、甘い所は紛れも無くBLなのだけれど、受の妄想癖と桃色パンチ振り、痔主としての葛藤には大いに笑わせて頂きました。当然ながら、今年の自分内トンデモ・オブ・ザ・イヤー、堂々の上位ノミネート作に決定。物凄く楽しかった事は事実。「KOCHO」もきっちりタイトルに絡んで来ますが、「誘惑」と書いて「エロス」と呼ばせるだけではなく、「ア○ス」のダブルミーニングもありだと思います。
必要性が無いのにヒップアップエクササイズをする受を見たのも初めて。ここまで思い切ったトンチキ系にするのであれば、ついでに受の痔の程度も知りたかったです。切れ痔なのかイボ痔なのか、はたまた他の痔なのかを。美貌の受が痔に苦戦する様子もおかしかったですが、そもそも、叶野。食事の大半をコンビニに頼っているので、あれでは繊維質不足で痔になっても仕方が無いような気がします。「今後はもうちょっと、食生活にも気をつけた方が良いわ」等と老婆心を出しつつ、終始楽しく拝見させて頂きました。
それにしても、一体誰なんでしょうか。叶野の痔の手術を依頼をした方は。叶野は周囲に痔主である事をひた隠しにして生きていますから、友人・知人の線は薄い。一度だけ診察を受けた病院の医師と言うのも、信憑性が薄い気がしますしねえ。それとも、手術を勧めたのに断った叶野を心配した医師が、「こう言う時こそアーサーズ・ガーディアンに依頼をして、優秀な医師を派遣して貰った方が良い」等の判断を、したりしなかったりしたのでしょうか。真相は藪の中(※)。
そんなしょーもない所が気になって仕方が無いのはトンキワ腐女子の悲しい性。自分自身にがっかりです。
(※感想で認めたものはそのまま残しておきますが、この疑問は後のコメント欄でアッサリ解決しました。二人の出逢ったきっかけが衝撃+笑撃的過ぎて、そちらに気を取られっぱなし。読書中の私の脳は、過剰なトンチキフィルターに覆われて、基本的な部分すら見失う有様でした)
しかしですね。叶野の場合、確かに痔の治療は重要ですが、あの妄想癖こそをどうにかした方が良いと思うのですよ。作中では、その辺りを全く弄らないままで完結しているのですが、これは依頼ミスなのか。それとも、アーサーズ・ガーディアン側の受託ミスなんでしょうか。その辺りも気になります。まあまあ、寛大なグレッグの場合、妄想癖ごと叶野を受け止めてしまうのでしょうけれども。(笑)
そんなこんなもありますが、シリアスあり、トンチキありで楽しかった!
今作の執筆者予想は木原先生でお願い致します。正し、「ひちわ先生の意見をより大きく取り入れつつ、ノリノリで書ききった木原先生」と言う、マニアックな予想で参りたいと思います。
胡蝶の誘惑 アーサーズ・ガーディアン 3rd Story(Bk1)
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