【内容紹介】
美少年小説の書き方教えます。人気作家、中島梓(栗本薫)の具体的、かつ実践的エッセイと門弟の作品をおさめた、小説家志望者必読の書。
日本最大級ネット書店のイーブックオフ
【感想】
@古本市場
久々に引っ張り出したものの、読み始めたら止まりませんでした。中島御大大絶賛の怪作「影人たちの鎮魂歌」は、本当に名作(迷作)です。本気で涙を流しながら爆笑してしまった為に腹筋が痛い。
今作は有名過ぎる程に有名な作品なので、然程説明は必要ないかも知れません。「小説JUNE」に掲載された小説のレベル低下に危惧をした中島御大が、作家を目指す方々に小説の書き方から投稿作品の添削指導をした、正真正銘の「小説道場」が収められています。尚、手元にあるのは新書館版になります。
「現実と乖離したものほど、堅実な芸術に支えられてなければならない。フィクションがフィクションであるほど、それを支える幻想に首尾一貫性や、文章力、妄想の力というものがなかったら、それは破綻する可能性が大きくなる」
冒頭からきっちり基本の説明もあって親切です。投稿者は、まずはJUNE誌の編集さん(門番)の検閲を通過しないと、無事に御大に作品を目を通して貰えないのが基本条件。漸く作品に目を通して貰った所で、連載記事で評価をされる方となれば、更に少数に絞られる。プラス評価だけに限らずマイナス評価もあり。例えば連続投稿者の場合、1度目には階級を与えられても、2度目以降の結果次第では階級は下がる下がる。
欠点は容赦無く指摘され、長所があればそこそこに褒められるものの、御大が手放しで喜びを見せる作品はごくわずか。連載が始まった時点では、既に榊原姿保美(史保美)、吉原理恵子、森内景生先生と言った面々はプロ作家としてデビュー済み。投稿作が前者のプロ作家陣との比較をされる事も屡。兎に角、雑誌連載方式の道場とは言え、傍観する者にとっては、「投稿者」と言うだけでも勇者のように思えます。それ程に評価は厳しい。しかし、改善の余地があるもの、手を加えれば良くなるものに関しては、御大自身が見本を示す程の熱血指導あり。雑誌連載方式とは言え、その辺のカルチャーセンターで開講されている文章講座等よりも、遥かに密度の濃い内容。
私的にブログを開設し、好き勝手に支離滅裂な文章を書き散らす私のような人間から見ても、大変に面白味を感じる道場ですが、流石に自分の身の丈を理解している者としては、ふざけた短編でさえ投稿する勇気は湧きません。兎に角指導は厳しいですからね。しかし、御大が何処までも小説が好きで、小説が無ければ生きて行けなくて、小説さえあれば死んでも良いとでも言い出そうな程の、「小説好き」が伝わって来るのが良いですね。本当に小説が好きな人が、本気で小説家を目指す方々の指導をする訳ですから、どれ程に辛辣な評価を受けても投稿を続ける常連が存在する事にも頷けます。
この第一巻で登場する有名所の投稿者には、江森備先生、少しマニアックな所では布刈丸洋子先生がいらっしゃいます。江森先生は、投稿初期には本当に辛辣な評価を受けましたが、一気に伸びて御大も大喜びする程のセミプロに。投稿作は、「私説・三国志」に繋がる中国もの(と言うか、その基礎そのもの)。元々ラジオの構成屋でもある布刈丸先生も、後にJUNE作家としてデビューされています。当ブログでも、「
薔薇の館 -美少年連続殺人事件-」の感想を認めましたが、キスの感触を「ナマコに触れたよう」と表現された文章を見た際には衝撃的(笑激的)でした。布刈丸先生は「薔薇の館〜」でも、JUNEなのにイロモノ的な空気を感じましたが、投稿作はそれ以上のイロモノ風味。ちょっと笑ってしまった事はここだけの秘密です。
イロモノと言えば、「さぶ」と二重投稿になってしまったものに「どすこいもの」があったり、「個人的に物凄く読みたい」と思ってしまうキワモノも登場。投稿者の方の事情で、道場の規約通りに破門の形になりましたが、本気で作品を読んでみたかった。(すみません)
そんな話はさておき、投稿作には、やはり流行りものの影響が付き物。家元系の投稿が続けば、榊原先生の「カインの月」が引き合いに出されたり、榊原先生の作品のファンとしても嬉しかった。濡れ場の喘ぎ声描写についての話題では、ここでも、榊原、吉原、森内先生が引き合いに出されていました。
中でもおかしかったのが、固定化されつつある濡れ場に対する苦言の一つに、「袋」に触れたものがあって笑いました。投稿者の濡れ場表現の傾向として、袋を舌で転がしたり云々が見られると言った話題に入った際の、「袋って、どんな美少年のでもかなり―シワシワでババッチイしコッケイだと思うんですけどね」の一言にも爆笑しました。そりゃそうだ。でもあのシワシワは種の保存に直結していて、ラジエーター的役割(※精子は高温になると死んでしまうので)もするから、必要なシワシワでもあるんですけれどね。
ちうか、それだとアレですね。BLだとヤクザ等の下着がビキニだったりする事がありますが、サポート力が高い下着だと、袋に搭載されたシワシワによるラジエーターの役割が低下してあまり良くない。自分の体に自信がある人=ビキニ等のピッタリ系下着を着用する傾向にあると、何かで読みましたが、自分の体をアピールするあまり、場合によっては繁殖能力に影響してくると言う・・・。女性はエチケットやお洒落以前に、乳腺が切れるのを防ぐ為にブラジャーを着けますが、男性のビキニは、着用した本人がフィット感や自信の体の満足感を外に暗喩的にアピールする事は当人の自由であれ、あまりピチピチしたものを着用し続けると、場合によっては弊害が出てくるのかも知れません。
種の保存を取ってゆとりのある下着を選ぶか、自己アピールの強調・サポート力を選んで種の保存力を弱めてしまう可能性のあるビキニを選ぶか。生殖のデッド・オア・アライブに、時と場合によってはなったりならなかったりするのかもしれませんが、「攻めの下着」と言う印象の強いビキニよりも、生殖能力の減退を防ぐ面では、トランクスや褌が優れている事になりますね。トランクス以上にホールド感の弱い(種類にもよりますが、ここは定番の越中褌を基準にしています)褌=最強の攻め下着なのかも知れません。この辺りを考えると、実は深いですね(深くないよ!)。
そんなこんなもありますが、(基本的に)非生産が前提のJUNEものに登場する男達には、「アイドルはトイレに行かない」と言う幻想に並んで、「種の保存から外れても良い訳だから、綺麗なツルツル仕様でも良い」だとか、そう言った幻想があった方が盛り上がるのかなあ・・・。等とおかしな方向から、考えてもみたり。すっかり下着考察になりつつありますが、こちらはキリが無いので強制的に打ち止めさせて頂きます。ここまで下着に言及したのは
あの記事以来となりましたが、本当に色々申し訳ありません。
でもってまあ、アレです。
BL的な作品を読んでいると、しれ〜っと袋が愛でられている事がありますが、的確な指摘です。とは言え、竿に関しては色々と官能的な表現があるのに、実は袋の表現ってそれ程バリエーションは多くありませんね。「蜜の詰まったナントカ」だとか、そのものズバリでタマやら睾丸だったり。「即物的にやれば良いってものではない!」と、濡れ場に品が必要な事を御大も謳っていますが、そして話もスライドして行きますが、良く良く考えると、袋を官能的な表現で書き上げた作品には出逢った事がありません。読み手に袋のみで耽美的な美しいものを連想させる事が出来たら、それこそプロの官能作家なのかも知れませんね。袋に問わず、男女に問わず、性器関係はグロテスクなのが実情ですから、その辺りをいやらしく美しく表現しようと挑戦される方の、その心意気はやはり凄いと思います。もし、「袋」の描写だかえで官能を表現した作家さんをご存知の方。いらっしゃったらご一報下さい。
気付けばおかしな方向に他力本願をして脱線しましたが(そしてこうした思考が生まれてしまう事が、色々残念ですね)、この小説道場では、御大の目に留まった作品が収録されています。江森先生のように優秀なセミプロ作品の他、御大が異様な程にテンションを上げまくったものが、如月みことさんの「影人たちの鎮魂歌」。小説としては上手ではないとされながらも(そうは言っても文才が全く無い私からすれば、投稿した上、御大の目に留まるレベルだと言う事だけでも凄いと思います)、作品が放つ圧倒的な存在感に、「名誉一級!」を受けていらっしゃいました。
この作品を紹介する御大のテンションも相当なものですが、これを読んだ私のテンションも、擦り切れる事を心配してしまう程にうなぎのぼりました。本気で涙を流して爆笑しましたからね。作品はド真面目に描かれていますが、それが滑稽を誘って止みません。しかも忍者もの。伊賀VS甲賀あり、輪姦あり、乳首舐めあり、何故か主題歌まであり(御大も迷わず突っ込んでいますが、あるんですよ・・・、しかも二番まで)、イチイチ色々な事が凄いです。
御大が「生きる希望が湧いてくるわ!」と、ハイテンションで大歓喜していますが、私もそれ以上にテンションを上げました。この作品のトンキワ・トンチキ度(しかし作中の忍者達は全員が本気)の高さは、自分の中では伝説的なものと化しています。これから今作を手に取られる方には、是非是非読んで頂きたい作品です。何処を取っても最強だと思います。真面目な作品でここまで爆笑、泣き笑いに笑い泣きをさせられた作品を知りません。忍者もの好きな私は萌えもしましたが、何よりもこの作品の読後の達成感たるや、相当なものでした。忍の主題歌にはすっかり笑いの地雷と化してしまって、文面で目にするだけで涙と笑いが同時に込み上げてきます。「二番もあるんだぜ」の台詞が登場すれば、すかさず私を宇宙空間にふっ飛ばしてくれます。腹が捩り切れそうな程に笑ってしまった。娯楽性の高さも相当なものでした。力技も満載でしたが、心の底から楽しめるものでした。大満足。
しかし投稿者の方の「渾身の一作」と言う事がガッツリ伝わってくるのですよね。本気で一生懸命に書き上げられていて、そう言った真摯な態度を見せた投稿者に対しては、御大も本気で賞賛します。小説以前と言う前置きがされつつも、投稿者の気合まで評価をする所に好感を持ちました。短所は徹底的に叩かれるけれど、キラリと光る所を見つければ、そこはしっかり褒め上げますからねえ。御大、実は飴と鞭の使い方が上手いのだと思います。褒め殺し一辺倒ではなく、「こうしたら更に良くなるのでは?」と、褒める以外のアドバイスも忘れない。叱咤激励で人を伸ばす事で、口に出す以上に難しい事だと思うのですが、小説道場での御大からは、そう言った愛情も感じられます。職場にこうした上司がいたら、たまに小煩いと感じる事もあっても(小声)、部下はしっかり着いて行くでしょうね。
とは言え、放っておくと、「影人たちの鎮魂歌」やビキニに舞い戻ってしまいそうです。そこに戻れば延々と言及を続けてしまう事も確実なので、そろそろ打ち止めにしたいと思います。毎度のように長々と、そして相変わらずの支離滅裂振りで失礼していますが、作品はとても読み応えがありました。ブッ○オフで105円で手に入れましたが、濃厚な内容は定価以上の価値があったと思います。
小説道場 I (bk1)
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