【あらすじ】
将棋界の若手の頂点に立つ冴えた美貌の天才棋士・朱莉。その朱莉に尊敬と嫉妬を抱く新人棋士の葉司は夜ごと陵辱され獣のように抱かれていた。三年間、朱莉の激しい求愛を拒めず苦悩し続ける葉司。けれど、朱莉と対戦する日のために今は負けられない―。段位を上げる葉司だが、初めて黒星をつけてしまい…!?火花散る盤上の恋の駆け引き、アダルト・セクシャルラブ。
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【感想】
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未読本の山から引っ張り出して来たものの、こんなに凄い攻が登場しているとは予想がつきませんでした。
作品は将棋界を舞台にしています。新人棋士の葉司は、若手天才棋士の朱莉に惹かれた。将棋の指し筋にも同じものを感じて、自分から朱莉に近付く。新人棋士が、天地程にも力の違う天才棋士に勝負を吹っかけた構図が出来上がります。しかし葉司の人生の師が亡くなり、二人の関係は一転。葉司が「同じ指し筋を持った」宿敵として朱莉を意識する反面、朱莉の葉司への執着を深めた。葉司は朱莉に体を奪われ、陵辱されるように。しかし葉司は、朱莉の激しく偏執的な求愛を拒めない。
棋士としての対戦が中々実現しない中、しかし葉司は朱莉を拒めない。直情的ではあるものの、常識人の葉司は苦悩しますが、それとは対照的に朱莉の執着は深まるばかり。
二人が体の関係を持つのは、葉司が敬愛していた人生の師が亡くなった直後ですが、通夜の席から無理に葉司を連れ出した朱莉が口にする言葉が、早速怖い。
「君が私に近付いたんだ、君が私を目覚めさせたんだ。すべては君からはじまったんじゃないか。それなのに、私が君をみつけたら逃げ出すのか?私が君を追えば、避けるのか?それが判事亜でなくなんだと言うだ、言い訳のしようがあるか?自分は犯罪者でないと」
葉司を犯罪者と決める。因みに朱莉は妻帯者。妻は夫が天才棋士である事だけに価値を見出しているものの、朱莉は結婚生活に興味が無い。政略結婚的になあなあな状況で結婚し二人だけに、夫婦関係は冷え切っています。一応は妻帯者であるにも関わらず、妻には興味を持たない朱莉の暴走も凄い。
通夜の席からホテルに連れられた葉司ですが、この時点で朱莉の暴走と妄想は泥沼化をしている訳です。どれだけ葉司が抵抗しても、「君は私の頭脳を煩悩によって狂わせた。その責任をとらなくてはいけないんだ」と来る訳です。盤上で勝負をしろと抵抗する葉司の反発も虚しく、走り出した朱莉は止まらない。
棋士としての朱莉と葉司の対立関係には、更にもう一人が関わっています。それは葉司の亡くなった師匠ですが、その師匠に対する朱莉の反発心も相当なもの。「あの老いぼれが、私たちの運命に割り込んで君を私から奪おうとした」と出ます。更に葉司の抵抗は続くものの、「僕たちは求めあっている」「君も苦しむがいい、葉司。君を見つけ、君を見ているだけで、ときにたまらない気持ちになるこの僕のおろかさを、君はもう笑えない」
こんな調子で攻防戦を繰り広げるものの、葉司は食われてしまいます。恐ろしい程に一方的で傲慢で幼い朱莉の執着が、いつしか葉司に深い愛情として伝わるようになる訳が何とも言えません。朱莉の葉司への執着だけを言えば、変質的で強烈なんです。純情な愛情が積み重なった奇跡が生んだ偏執的な執着愛。背中がゾっとする程に深く、逃げ出したくなる偏執思考ですが、ヤンデレと表現しても良い気がします。自分が壊れている事に気付かないままで壊れてしまっているのが凄い。
葉司の体を奪う事の朱莉は、葉司と自分の関係を一蓮托生のものだと確信しているんですね。追って来た葉司を捉えて、自分の世界に二人で堕ちようとする訳です。二人の存在を「神に定められたもの」「運命」としての確信も強い朱莉なので、言動が本当に危ない方向に突っ走っています。アクセル踏みっぱなしでブレーキが壊れてしまっているから、走り出した車は止められません。それ程に突っ走るのが朱莉。
そうして関係が深まる二人ですが、葉司の葛藤は深い。あくまでも棋士としての好敵手として、朱莉との関係を深めたいのに、朱莉は自分をそうは見てくれない。その上、朱莉には妻がいる。自分達の関係は不倫でしかない。朱莉とは違って常識人である葉司の苦悩と葛藤は深まる。対する朱莉は、葉司への執着を深めつつも、棋士としての自分のスタイルは崩さない。まるで冷血漢と言うか、サイボーグと言うか、これと決めたら少しもそれる事が無く、自分が歩む道をじわじわと突き進む。そこには感情が存在していないかのようにも見えますが、「実は物凄く臆病でナイーブな人なのかも知れない」と思わせる部分が存在します(特に後半)。とは言え、基本的には怖い程にディープな存在感を示しているのが朱莉。ここまで凄い執着を見せる攻を目にした事は、数々のトンキワ・トンチキ本を渡り歩いている人間にとっても衝撃的でした。
脇役には面白い人物は何名か登場したのですよ。新聞記者の平さんの朱莉+葉司評は面白かった。棋士としてではありますが、主要人物達を観察する人物が添えられていて良かったですね。「一筋縄では行かない人物」として、腹に色々抱えていそうでありながらも、面白い存在感を示していた蜘蛛橋や支倉、女の打算を働かせる事が出来ずに苦悩する朱莉の妻、ひっそり葉司を狙おうとする俳優の鼎等、個性的な面々も登場していました。夫々の中には愛憎や打算、穏やかな家族愛のようなものが絡む事もあって見飽きさせられる事なく読書が出来ました。
朱莉と葉司を中心にした愛憎劇は本当にディープな方向に転がって、そして綺麗な方向に浄化されて行きますが、その辺りに言及する気力を殺がれる程に、朱莉のインパクトが凄かった!頭脳派で大人しそうな美貌の白皙メガネだと思っていたら、色々な意味で怖い目に遭いますね。人間の感情に湿度の高さを感じる作品でした。
白皙(bk1)
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