【あらすじ】
タンゴの男と呼ばれながら、本当の情熱を知らぬままに踊り続けてきたダンサー・アンジー。ラテン人の母を持ちながら、祖父に引き取られ、今は日本人として暮らすヒロ。アンジーは出逢いのひと目から沸き立つような欲望をヒロに感じる。男にはまるで興味のないヒロだったが、懐かしい故郷を感じさせるアンジーの包容力に、戸惑いながらも、いつしか心と体を開いてゆく・・・。男が男を愛する時を情熱のタンゴに乗せて描いた、著者初めての作品集。描き下ろしも収録。
日本最大級ネット書店のイーブックオフ
【感想】
@古本市場
「筋肉・体毛ファンの方、お待たせ致しました!」と言う感じでしょうか。肉体描写だけを言えば、稀にアクアコミックスから発刊される兄貴系BLを連想しますが、方やヒゲの40歳目前、方や坊主の30代前半(だと思われる)の男盛りなメインカップルの可愛い事!テンションがあがりました。
男同士のタンゴものと言えば、華藤先生の「
サウダージ」もありましたが、今作でも盛り上がりました。良いですね、男同士のタンゴ。
さて。
「タンゴの男」と呼ばて来たダンサー・アンジーは妹のような存在のベネと暮らしている。ベネもダンサーであり、タンゴの指導もしている。アンジーの性趣向は奔放だったが、本当の情熱を知らないまま。それを知るベネは、レッスン中に偶然居合わせたヒロに対し、アンジーが興味を持った事を察知。ラテン人の母を持ちながら祖父に引き取られ、今は日本人として暮らすヒロもまた、アンジーに興味を湧かせた。男と別れたばかりのアンジーを思い、アンジーが興味を持つヒロをタンゴの世界に引っ張り出そうとする。
勝気なベネは女性ですが、アンジーとヒロをくっつける為のキューピッド役になります。8年にも渡ってアンジーのパートナーをしている女性ですが、男女の関係にはありません。アンジー曰く、「妹のような存在」のベネですが、ベネ曰くアンジーは「ママのような存在」。他人でありながら、兄妹以上に親密な信頼感で結ばれる二人が、とても微笑ましい。傍から見たら恋人同士のようにも見えますが、その実、性別を超えた親友のような関係を持ち続けているのですよね。
女性が男同士のカップルを取り持つ事自体は、稀に見かける設定ですが、ベネの存在感は只のキューピッド役には納まりません。ヒロを交えた3人での新たな親友・信頼関係を成り立たせる為の存在としても、とても重要な役目を担っています。アンジーとヒロを支える事だけでは無く、二人を見守る立場でもある。それこそ、二人のお母さんのように見える事も間々あります。(笑)ダンサーの合間にSMショーで女王様をしている事もあるベネですが、実は母国の家族を一人で養っている苦労人。だからと言って、本人は苦労を見せる事も無く、結果として家族を養う事にはなっていても、自分が序湯熱を傾けられるものを持っていて、とても自立しているのですよね。素敵な女性だと思いました。
肝心のアンジーとヒロと言えば、男盛りな30代カップルとは思えない程に、急接近したり焦れたりしながら恋人同士になりますが、たまに物凄く可愛い。特にヒロの可愛さは何とも言えません。(笑)
知り合ってからも、ヒロは2年付き合った恋人の女性からは二股をかけられて別れを経験したり、アンジーはヒロを気にしながらも他の男に手を出したりと、それなりの小さな波乱はありますが、「そろそろ二人は一穴勝負に入るか・・・!」と言う方向に定まりかける頃の、ヒロが可愛い。ノーマルであったはずの自分への葛藤と狼狽、アンジーへの自分の心を受け入れるまでが特に可愛い。マッチョな30男が赤面するシーンも沢山見られます。青春時代に初恋を覚えたばかりの乙女のようにも思えた事がありました。(笑)
奔放に一時凌ぎの恋人を見つけて来たアンジーにしても、ヒロの存在は特別で、自分の中で特別視をしているからこそ、慎重な面も見せています。だからと言って、慎重になり過ぎる事は無く、ベネと共に外堀から埋めるような状況を作って、慎重に見える積極性を持ってヒロに接近。それが功を奏してヒロを獲得しますが、そのまま突っ走る二人ではありません(それまでの過程で、酒の勢いで触れ合ってはいますが)。アンジーに触れていたいのに、それが恋愛感情から来るものなのかが解らないとヒロの葛藤は続きます。
そこからのシーンが見せ場で、ヒロの葛藤を受け入れたアンジーの発言の数々が良いのですよ。ベネが「ママのようだ」と例えた、母性的な包容力を感じさせられます。「あいのこ」として生まれ、幼少時代から家族には恵まれたとは言えないヒロが、アンジーに自分の過去を吐露したシーンでも、アンジーの母性的な包容力が見られましたが、アンジーの母性的な包容力や優しさは、元から持ち合わせたものだけではなく、某かの憂いを沢山知るからこそのものだと言う事が伺えます。傷付く事を沢山経験して来たからこそ、他人の苦しみを解ってあげられる存在と言うか。具体的なアンジーの過去は深く描かれる事はありませんが、どう言う訳か、そんな気がしていました。
流石に心が固まった後の濡れ場、得に素股は「おおっ・・・!」と思わず唸ってしまうようなものでしたが、あれは素股ファン必見ですよ!男の男による男の為の素股だと思います。途中で違和感を覚えるヒロの心情がとてもリアル。途中からはアンジーに流されちゃっていましたが。(笑)
ラストも良かったですね。女性が関わりながらも、メインカップルの邪魔にならないのは、ベネが魅力的な女性だったからでしょうね。アンジーとヒロにとっても、自分達を良く知り、支えて見守ってくれるベネの存在は大きいと思います。
色々な面で、こんなにニヤつきながらBLの漫画を読んだのは、久し振りの事でした。ヒロの名前が、アンジーと、そしてタンゴにとっても重要な意味合いを持つものだと言う「符号」になっている事も面白かったです。絵柄の好みは大きく分かれる気がしますが、とても読み応えのある作品でした!
タンゴの男(bk1)
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