【あらすじ】
送られてきた妻の浮気の動画…商社支社長の洸己は熾津組若頭の臣に脅されて嬲り者にされてしまう。以降、臣に妄執され!?
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【感想】
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「
蛇恋の禊」では、ただただ「やばい武闘派の関西ヤクザ」のイメージが強かった熾津臣ですが、今作でもバイオレントな赫蜥蜴若頭でした。とは言え、恐ろしく可愛い所も目白押しでした。先日のアラブものと併せ、この頃の沙野先生は甘え攻めブームでしょうか。
シリーズ完結編なので、過去の作品への言及も入れつつ、変則仕様のネチネチした感想で参りたいと思います。長文なので、お暇な方のみお付き合い下さいまし。
さて。
今作は、受の高柳光己(こうき)の視点を軸に話が進行します。複雑な出自があり、会社の為に自分を利用する社長の養父や、我が儘な妻(今回の受は妻帯者なんです)に振り回され、鬱屈した日々を送っていた光己は、妻の浮気をネタに臣から強請られた上、凌辱されてしまう。妻の父親と結託した部下・安曇の依頼で熾津組が動いた形ですが、臣自らが乗り出したのには理由は、光己の容貌が亡き異母兄に似ているから。尚、+αで名前も少し被っています。
臣は過去に、異母兄の晃壱(こういち)と実母を同時に亡くした。晃壱は本妻の、臣は妾の子だったが、兄弟仲は良かった。しかし晃壱は、臣の母を道連れに心中した。原因は火事。晃壱と臣の母は、密かに想いを寄せ合う恋人同士だった。臣には、信頼していた晃壱に裏切られて憎悪する反面、大切な存在だった二人を救えなかった後悔もある。延焼中の自宅の中で目にした「炎に包まれる巨大な蜥蜴」は比喩。背中に赫蜥蜴の刺青を入れた事には、”最期の閨”でひとつに溶けて死んでいった二人が、羨ましくて憎くて愛しかったと言う、臣の複雑な心の現われ。また、臣が持つ「外に向かっているようで内側に向かっている破壊願望」は、この時に生まれている。
異母兄との複雑な過去から、光己と出逢った当初の臣は、光己に晃壱を重ねて「壊す」つもりでいた。色々と破天荒で荒々しい男ですが、その反面、繊細で優しい部分も持っている。光己が母親に心中されかけた話を聞かされた際に、(光己の母親を)「優しい女やったんやな」と口にする様子は切なかったですねえ。光己が殺されかけた状況は悲惨ですが、光己の母親が一緒に死にたいと考える程、子供の光己を愛していた証拠でもあるのですよね。それに対して臣の母親は、子供の臣よりも、恋人の晃壱を選んでしまった。光己の母を「優しい女」と表現した臣には、複雑な思いが表れているように感じられ、妙にしんみりとしてしまいました。とは言え、後半の「蜥蜴の尻尾切り」発言を含め、「破壊願望の強」さが前面に出る事が多い。話の進行とともに、臣の内面は変化をして行きますが、臣の強い破壊願望を緩やかにするのが、光己の存在。夫々に鬱屈している二人は、次第に惹かれ合うように。
二人の恋の進行には岐柳組も絡みます。前作から引っ張っている岐柳組VS熾津組の抗争は、完結編にも関わらず、決着が見られません。その辺りは消化不良だと感じたのですが、臣と光己が恋人同士になるまでの過程はハードで良かったですねえ。
「お前の『コウちゃん』になってやる」なんて、臣にとっては最強の殺し文句ですよ。
年上の臣を甘やかす度量を持っている光己は、本当にオトコマエで素敵でした。年下女房が年上女房的包容力で年上亭主を支えるってのはおいしいです。暴力的な描写も多い本編でしたが、36歳の臣と31歳のコウちゃんは、年齢は大人なのに可愛いらしさも併せ持つカップルだと思います。
度量と言えば思い出しました。東京での抗争で子蛇組長達が絡んできますが、熾津側からの視点で話が進行する事で、組長としての凪斗の成長が良く判りますね。良い意味でも悪い意味でも、9千人を背負った大組織の長として、順調な成長をしている事が伺えました。
本編はそんな調子ですが、臣のブラコン振り、甘えん坊な攻め振りに、異様に萌えてしまった事はここだけの秘密です。
父親である組長ですら心配する程の古式ゆかしい武闘派で、破壊願望を持って死に急ぐ男が、年下の光己に甘えているんですよ!凌辱&甘え攻めですよ!過去に異母兄を失った事が、きっかけとして影響しているものの、暴力的な武闘派ヤクザが、「甘えん坊の赫蜥蜴ちゃん」になっている時にはどうしようかと思いました。「わしは〜」「〜やのう」等と強めの関西弁で口を割る度に、「
獣―ケダモノ―」の九堂を連想したものですが、光己を亡き異母兄に重ねて「コウちゃん」と呼び、「おっぱいが恋しなったわ」と乳首に吸い付いたり。時々妙に幼児化して可愛い。うっかりガン萌えしました。(笑)
岐柳組との抗争が休戦をした後の光己は、妻や会社等の身辺整理をしてから臣に嫁いでいますが、本当に幸せそうです。光己にとっては思い出深い八朔を、臣が大切に扱っているのも印象的です。「本当にこの子は優しいんだから・・・!」と、臣の頭をなでなでしたい気持ちになりました。36歳の大人の男なのに、妙に可愛い。光己が年上のように錯覚してしまう二人の会話も良し!年下なのに姉さん女房風味と言うのが良いですね。仕事中はきっとバイオレントな赫蜥蜴でしょうが、私生活では、年下女房にうんと甘やかして貰えば良いと思います。
その反面、30代とは思えない老獪さが感じられる事もありましたね。臣だけに限りませんが、沙野先生の作品に登場する攻は、稀に言葉攻めや日常会話の表現等に老獪さ(と言えば恰好良さげですが、オッサン臭を感じると言う意味合いも含まれています)が見られ、良い意味で気になる事があります。
「蛇淫の血」では辰久が、(異母弟・凪斗の生尻に対面しつつ)「育ち途中の小娘みたいな尻だ」等と発言したり。「蛇恋の禊」では、「角能さんて、ときどきオヤジっぽいこと言ったりするし」と子蛇組長が角能=オヤジ認定の発言をしたり。脇役の折原も、「八十島サンは、生まれたときから純正のオヤジちゃいますの」と八十島に対してオヤジ認定の発言をしていますね。勿論臣の発言も、甘えたちゃん+オヤジ発言が多くて萌えました。
沙野先生の個性と言えば、攻のオヤジ発言を含め、他ではあまり見られない言い回しや表現が登場する事も気になりますね。最近ではアラブものでの「やわい」、「くじく」に続き、今作では「どん詰まり」が気になりました。「突き当たり」だとか、「最奥」だとか、稀には「ドン突き」も見かけますが、「どん詰まり」は初めて目にした気がします。
そしてガッツリ脱線したので本線に戻しますが(そしてすぐにまた脱線しますが)、散々凌辱されつつも、中々声を出したり泣き喚いたりしない光己の、「頑丈さを感じる受け振り」も良かったです。「攻でもいけそうな受」と言う設定が効いていますね。物凄く「バイオレント臭」の強い作品ですが、臣と釣り合う受は、これくらい頑丈じゃないと務まりません。身長を含めて色々な部分が立派な光己ですが、あのイラスト(95頁)が登場した時にはどうしようかと思いました。180cmの大柄な男があんな姿勢を取らされているんですよ。色々な意味合いで大迫力!
二人のエロも突っ込み所が沢山ありました。
スパンキング(と言っても、主に尻叩きですが)は勿論の事、軽めの素股。広げる時には指にゴム着用。なのに本番は生、だとか。「セーフセックスを優先するならば、逆の方が良いんじゃないか?」と言う、「セーフセックスにならないゴム使用」も、プレイの一つだと考えるとちょっと萌えたり。これはこれでフェティッシュプレイだと、思い込んでみたり。
雨が降る中での屋上の布越しプレイ(後に本番まで発展)も良いですね。沙野先生の布越しプレイは「
獣の妻乞い」に続いての登場ですが、光己の状況が凄いです。骨折はしていますし、流血状態ですからね。意識も朦朧として、そちらこちらを出血(及び出欠)している状況の中、臣から布越しプレイをされている訳です。壮絶ですが、光己自らが所望をして臣に強請っているのがミソです。流血状態で誘い受け。下手をすれば命の危険に発展しそうな状況での無謀なセックス。光己は自分に対してサドマゾなのだと、邪な視点で萌えてしまった事はここだけの話です。ろくでなしですみません。
布越しプレイに関しては、実はいつき朔夜先生も「
午前五時のシンデレラ」で取り入れていましたが、直接に楽しまず、敢えて布一枚を隔てる所に、ムッツリ度の高さと言うか、「好きなものは後で的嗜好」と言うか、天邪鬼の焦らしプレイと言うか。そんな感じの欲求が連想されてグッと来ます。
作中での布越しプレイは2回。1度目の布越しプレイにおいては、「蛇淫の血」の「おんぶプレイ」に次ぐ斬新なプレイでした。何せ臣、初対面にも関わらず光己の背中側に回り、ジャケットとシャツの間に性器を包んで、布越し自慰をしましたからねえ。その上、ジャケット下のシャツの背中に飛ばしています。この際の光己から見る臣の第一印象は、「本気で頭のおかしい男」。確かに、色々な意味合いでギリギリのプレイだと思います。ジャケット内でシャツに発射されるのなんて、やられた側の屈辱感は相当なものでしょうしね(そんな屈辱の強さに萌えますが)。
プレイ中と言えば、光己の右耳の軟骨を「ゴリゴリと齧って」もいるのですよ。アラブものに引き続き、沙野先生の中では「ゴリゴリ」と言う表現がブームなのだと推察しました。次作でもオノマトペチェックを強化したいと思います。因みに2度目の布越しプレイ(こちらでは臣が、光己の本体を下着の上から口で可愛がっています)は、雨天屋上での流血行為中に展開されました。
そしてそして。
私が沙野作品を読む際の恒例行事(
こちらの記事参照)、「下着描写チェック」も勿論しましたが(変態ですね)、「沙野先生=ビキニパンツ作家」の牙城が崩れつつあります。今日からオブラートに包んだ表現の「=下着作家」でお願い致します。因みに今作では、受の光己がボクサーブリーフ愛用者でした。先日のアラブものでの受はボクサーショーツでしたが、ブリーフとショーツ。同じボクサータイプでも下着の表現バリエーションを変えた意図が気になります。ショーツ→ブリーフと来たので、「次回作での下着登場は、またビキニか・・・!」等と淡い期待をしつつ、そう言えば「蛇淫の血」での凪斗の下着がトランクスだった事を思い出しました。
子蛇組長は「蛇恋の禊」以降、和装姿での登場が増え、それとともに「生装備(ノーパン)」率が上がっています。1作目の清純派トランクスに比べると、着々と大胆な仕様になりつつありますが、トランクス着用→和装の時は生装備。この変化は興味深いですね。子蛇組長が和装で生装備を繰返す程に、組長としての器を広げ、岐柳組の力を拡大させている気がします。ある意味では、「生装備=子蛇組長の気合いの高さ」を示すバロメーターです(多分)。子蛇組長の生装備が日常化をする頃には、岐柳組も日本一の組織となっているかも知れません。
沙野作品での下着考察と言えば、トランクス1名(覚醒前の子蛇組長)、ボクサーブリーフ×1、ボクサーショーツ×1。花シリーズと「天獄の雨」の攻を合わせるとビキニ5名(うち花シリーズの1名は際どいビキニ)。まだまだ、ビキニが頑張っていますね。受のボクサータイプに負けないで下さい。ともあれ、このデータは私が把握をしている範囲なので、もしかしたら、下着描写はもっと多いのかも知れません。
尚、子蛇組長のパパン・岐柳の大蛇は多分、褌だと思います。イラストでは登場していませんが、赫蜥蜴パパンも絵に描いたような任侠系だと思うので、やっぱり褌系でお願いしたいものです。
更にどうでも良い補足ですが、英田先生の「
今宵、天使と杯を」でも黒ビキニ下着を着用するヤクザが登場しています。沙野先生のビキニ着用人物達を合わせると、BLに登場するヤクザ=ビキニタイプの下着の愛用者が多いような気がして参りました。
そしてここから先は、上記以上の蛇足記事です。シリーズ内で気になったものについて、勝手に考察(妄想込み)しています。
お時間に余裕のある方はどうぞ。
【子蛇パパンと赫蜥蜴パパン考察】
子蛇パパンこと岐柳の大蛇は、「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」を信条にしており、谷から這い上がる事が出来なかった場合は、「所詮はその程度だった」と切り捨ててしまいそうな潔さも感じられます。ある意味では、物凄く冷血漢の合理主義者。子蛇組長も不必要な程の荒波に揉まれました。ひっそりと一般人として暮らしたかったのに、無理矢理そっちの世界に引っ張り上げられて大変。ともあれ、嗅覚+目端の利く大蛇パパンの目論見通り、子蛇組長は着々と器を広げています。今作の抗争中の様子でも、子蛇組長の成長が見られて良かった!
それとは対照的に、赫蜥蜴パパンは結構心配性。「組長なのに心配性」と言う部分にグっと来ました。ちょっと萌えましたよ。とは言えパパン、本妻が住む屋敷の敷地内に、愛妾母子(蜥蜴ママンと蜥蜴っこの臣)を住まわせたり、男としての優しさと弱さが仇になってしまっていると言うか、優柔不断さが見えてしまっていると言うか。妙な所でうっかり出てしまった人情味のせいで、結果としてから回ってしまっている部分も、少なからずある。一般人的嗜好で考えると、人間味に溢れていますが、そっちの世界の感覚で言えば、自分にも他人にも甘い部分があります。それなりに威厳のある存在なのに、ちょっとだけ押しが弱い。でもそこから人間らしさが感じられると言う。
息子の臣が、光己や信頼している川野が負傷した後に見せる情の深さは、父親譲りかも知れません。
任侠組織の長としては子蛇パパン、人の親としては赫蜥蜴パパンに軍配が上がっていますね。岐柳組と熾津組は、ドロドロと泥沼化した抗争を続けるより、お互いに足りない部分を補えば、上手く行くような気がします。とは言え、岐柳組のひとり勝ちもつまらないので、ネチネチ抗争を続けて欲しいとも思ったり(ろくでなしですね)。
そう言えば、赫蜥蜴パパンには二つ名がありませんね。どう考えても、赫蜥蜴若頭よりは温厚ですが、温厚な蜥蜴と言うのも任侠としては迫力に欠けるので、無くて正解だったのかも知れません。
【岐柳組VS熾津組・抗争の傾向と対策考察】
光己がフロント企業を担い、赫蜥蜴を裏から支える形にはなりましたが、岐柳VS熾津が生々しく抗争を繰返している現状を考えると、子蛇組長が言及していた通りに、子蛇組が赫蜥蜴組を吸収した方が、面白い大規模組織が出来るのでしょうねえ。まあ、熾津組は簡単には白旗を揚げないだろうし、机上の妄想論でしかありませんが。只、裏家業では無く、夫々の組を支えるフロント企業同士の攻防戦があったら見てみたい。
子蛇組を支えるフロント企業は、蜘蛛を背負った男・久隅が支えていますし、赫蜥蜴組のフロントを預かった光己と併せ、ヤクザフロント企業同士でTOB等をやったりやらなかったりしてくれたら面白いかも知れません。光己の腕次第では、熾津組は、古式ゆかしい武闘派から、経済ヤクザへのシフトも不可能ではありませんし、ヤクザを支えるフロント企業同士の攻防戦BLがあったら面白そうです。
あくまでもメインはフロント企業であり、やくざの組組織は裏方。しかし、裏方に物騒なものを構えている企業同士だからこそ、取引・競争関係がスリリングになると言った形で。
【組織内での強固な信頼関係考察】
実は私。作中での臣と舎弟・川野の強固な信頼関係に萌えていました。これもある種の主従関係的萌えに近いものがある気がしますが、シリーズ全体を見渡しても、強固な信頼関係で結ばれる人間が多いですね。恋人関係のあるカップリングを覗けば、臣と川野。子蛇パパンと桜沢(久隅の叔父に当たる人物)。
八十島と折原の信頼関係も強固ですね。同棲はしているものの、具体的には「恋人関係」との言及は無し。その辺りに、色々と妄想と想像を掻き立てられるのですが、このほのぼのカップルの話も、いつか読めたら嬉しいです。
【燃える男達に萌える考察】
このシリーズは何気に、「燃える男達」も多いですね。今作で、昼メロ並の展開で臣の母を道連れに心中をはかった晃壱を含め、炎に絡んだ熱い男達が他に二人。臣の母を道連れにしつつ、臣に執着を与えて死んでしまう晃壱は、実は結構罪な人だと思います。
そしてそして。「蜘蛛の褥」では久隅が、惚れた情人(神谷)に操立てをする為(何気に純情派ですね。恋人をずっと「神谷さん」と呼び続けた事に萌えました)、背中に背負った蜘蛛の刺青を、鏝を使って焼いてしまっています。「蛇恋の禊」でも、やはり(結果論として)惚れた凪斗に操立てをした角能が、胸に火傷を負っています。この二人の凄い所は、自らの意思で自分の身体に鏝を当てているor火を放っている所ですね。命を引き替え寸前の行為とは言え、恋人に対する執着の強さが伺えます。自分を燃やしてしまう程の情熱を持った、男達に萌えました。
そんなこんなもありまして。
気付けば考察までもがおかしな方向に向かってしまいましたが、自家発電の妄想を含めて、存分に楽しませて頂いたシリーズでした。今作がシリーズラストと言う事は寂しいですが、今後の沙野先生の色々な新規開拓(エロ含め)を楽しみにしたいと思います。
【後日追記】
「
小説リンクス 2008年 08月号」に掲載された、「蛇恋の禊」+「赫蜥蜴の閨」ミニ特集の感想は
こちらからどうぞ。相変わらずアレな感想となっていますので、いつも通りに「冗談が通じる方推奨」です。
赫蜥蜴の閨(bk1)
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