【あらすじ】
深夜に鳴り響く一本の電話。バイト先で知りあった大学生・三日月卓からだった。彼に密そかに惹かれていた立花水郷は、突然の電話に戸惑いながらも、心ときめいていた。しかし、翌日友人の松島啓一郎から、三日月の死を知らされた水郷。しかも、三日月は、昨夜水郷が電話を受ける前に死んでいたというのだ…。昨夜の電話は、冥界からのメッセージ!?愛と謎が錯綜するミステリアス・ラブアフェア。
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【感想】
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野阿先生がルビー文庫で作品を執筆されていて驚きました。イラストは石原理先生です。本編は「反魂香(はんごんこう)」要因も強く、霊媒色に富んだ作品ですが、読書中の驚きは、先の「
背徳のマリア」以上でした。
両性具有や殺人等の設定はありませんし、一見上の設定から見る限りはBL・やおいと言ったものに違いありませんが、男達の倒錯的な恋愛に絡むオプションの規模が尋常ではありません。私が読んだ「BLレーベルから出版された作品」の中では、最高レベルのトンキワ本かも知れません。
色々な意味合いで凄い作品でした。
本編は、「ミッドナイト・コール」→「コール・バック」→「ラスト・コール」の3本編成。
高校生の立花水郷(たちばなみさと)は、アルバイト先で知り合った大学生の三日月卓(みかづきたかし)に恋をした。三日月もまた、水郷に対して特別な感情を持っていた。その事実を知った水郷の友人・松島啓一郎は、三日月に嫉妬心を抱いている。啓一郎は水郷に淡い恋心を抱いていた。しかし水郷の心が、三日月に向かっている事も知っていた。ある時三日月は、突然の事故で他界。それを知った啓一郎は、生前の三日月の声をサンプリングする。今で言うヴォーカロイドのようなソフトを使い、自分の声を三日月に似せた形で変換し、「死んだはずの三日月」として水郷に電話を架け始める。
それは、水郷が示した三日月への思慕と、それに対する復讐的な、啓一郎のプレゼンテーションだった。そして水郷は、死んだはずの三日月との会話を楽しみ、啓一郎は、三日月として水郷との会話を楽しんだ。
当初の水郷は、電話に対して不信感を持っていた。「死んだはずの三日月」との会話に魅せられながらも悩み、自らが住むマンション内にある喫茶店の知人達に相談をする。自らが体験した奇妙な体験を語ったが、知人達からは、「偶然が重なった悪戯電話」だと諭された。悪戯電話だと自分に言い聞かせた水郷は、三日月を装う犯人(啓一郎)への挑発を開始する。
「ミッドナイト・コール」は水郷視点。「コール・バック」は啓一郎視点で話が進行します。ルビー文庫だけあり、いつもの野阿節(流麗で装飾過剰な文章)はなりを潜めています。テレフォンセックス的なシーンは、やはり濡れ場なので野阿先生独特の耽美色が強まりますが、普段の野阿作品からすると、あり得ないと思える程の、面白い程に読み易い文章で書かれていて驚きました。(笑)
しかし、野阿節がなりを潜めたままで作品は終わりません。否、終わるはずがありません。完結編の「ラスト・コール」では、要所要所で野阿節が全開。前半〜中盤までの霊媒SFミステリー設定から、定番の「秘密結社」や「黒魔術」やらと、毎度お馴染みの「多要素ブッ込み方式展開」に発展します。思わず私、「来た来た来た・・・!」と、おかしな方面でテンションを上げてしまいました(すみません)。
少々脱線したので軌道修正をしますが、完結編での水郷と啓一郎は、夫々に思惑を抱きつつも、奇妙な電話に魅せられ、止められなくなってしまった。深入りをしてしまった二人は、深夜の怪奇現象に襲われ始める。実体は既に亡くなり、およそ、電子的な操作で生み出された架空の人格であったはずの三日月の亡霊が出現してしまった。新たに発生した「三日月の亡霊」は、死霊として水郷と啓一郎を翻弄する。水郷には淫魔となった三日月に翻弄され、啓一郎もまた、水郷とは違った形で三日月の死霊に翻弄される。三日月は実体を伴った存在へと増長し始める。
人間の水郷と啓一郎、そして死霊となった三日月との間には、奇妙な執着・依存的な三角関係が生まれてしまう。
その上、この奇妙な三角関係を作り出す地盤は他にもあった。それは水郷が住むマンション。水郷が利用をする喫茶店には、水郷が心を許す程の知人達がいましたが、この人物達は、実はとある秘密結社に在籍している。更にはマンション内で降霊会や黒魔術を行う事がある。
この辺りから、話が妙な方向に派手に転がって行きます。秘密結社の面々が、度々マンション内で降霊や黒魔術を行っている事、そして、降霊や黒魔術の影響で土地の霊力(地縛霊的な存在の力)が増幅してしまった。数々の霊力から影響を受けた三日月の霊は実体化し、力を増大させてしまった。オカルト要素がうなぎのぼりますが、SF的な要素も外されてはいないので、話は益々混線します。
総ての事柄の解決までの過程にも、悪魔信仰的な魔法陣やら五芒星やら、悪鬼邪霊やら精霊能(エナジー)あり。三日月の霊VS秘密結社の降霊+魔術大戦ありと、物凄い展開に発展するのですよね。色々な意味合いで野阿節全開。(笑)
結果として啓一郎は水郷を失い、恋に破れる。そして新たに秘密結社の新入者としての立場を与えられた。しかし、宇宙規模の孤独に突き落とされてしまう。小さな嫉妬と悪戯心から、取り返しのつかない状況を招き、たった一人で取り残されてしまいます。自業自得の結末ではありますが、それにしても「多要素ブッ込み方式」の野阿節が全開で、何度も顎を外しそうになりました。
1〜2作目では、「野阿先生もBLを意識すると、随分と筆と内容が丸くなるのねえ」等と余裕をかましながら読んでいましたが、3作目の「ラスト・コール」で野阿節全開の突撃開始(色々な意味合いで)。
霊媒・SF・サイバー・降霊に黒魔術に魔術師に霊媒少女に、魔法陣に霊魔の存在。一つが3行程のスペースを埋めてしまう、霊の拘束呪文。神の天罰に呪文に霊大戦、霊的権威・眷属的な巨大な力を持つ存在の登場。大戦に止めを打つ呪文は、伝説として語り継がれている、アダムが地獄門を開いた時の言葉、そして混沌魔術(カオス・マジック)の実践者にとって、禁呪(マントラ)になるものであったり。長剣を構えて血を媒介にし、混沌の星を発生させ、古の業で、暗黒の動悸を鎮めてみたりと大忙し。ラスト付近では、BL幻魔大戦とも言えそうな、大規模の霊VS秘密結社(黒魔術+霊媒)の対決が展開され、過剰な驚きと慄きの連続でした。
淫魔×人間、人間×霊×人間の魂の霊媒的3Pやら、確かにBL・やおい的要素も詰め込まれているのですが(濡れ場に入ると「耽美野阿節」に変わりますが)、それ以上にオプションの展開が破天荒過ぎて慄きました。こう言った内容の作品に対し、出版へのGOサインを出した、当時のルビー文庫編集部に拍手を贈りたいと思います。野阿先生にBL枠で作品を書かせようとした編集部が、本当にオトコマエ過ぎると思います。
過去に私が読んだ「BLレーベルから出版された作品」の中では、間違い無く、最高レベルのトンキワ作品だと思います。あまりにもトンデモでキワモノ過ぎるあまり、後半ではBLを読んでいる感覚が無くなっていました。前半で重要視がされていた、霊媒展開が別のものに塗り替えられていますし。(笑)
流麗で装飾過剰が織り成すブッ飛んだストーリーは、無駄に高い筆力のせいで、全くギャグにはなりません。それにも関わらず、強く漂うトンキワ感が何とも言えません。「野阿先生ご乱心?」的な意味合いで。
BLとしても規格外の展開が目白押し。
深い意味合いで「心震えるトンキワ本」でした。(笑)
ミッドナイト・コール(bk1)
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