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ハスイ

Author:ハスイ
観察点は曲がり気味。そしていつも的外れ。個人の独断と偏見に基づいた「ゆるい」感想ブログです。

閲覧は「冗談が通じる方・心の広さがオーシャンスケールの方推奨」でお願い致します。


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新任教師 (上)

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気になるものメモ。

++【Novels】++

  • ただ優しくしたいだけ /水原とほる
  • デコイ 囮鳥/英田サキ
  • デコイ 迷鳥 /英田サキ
  • 雪の記憶(仮) /剛しいら
  • きみがいるなら世界の果てでも /榎田尤利


  • ++【Comics】++



  • ++【アンソロジー】++


  • ++【BLCD】++
  • オトナ経験値


  • 【Others CD】
  • MOMOTTO TALK CD4 神谷浩史盤

  • 背徳のマリア〈上〉 (ピアスノベルズ) 背徳のマリア〈下〉 (ピアスノベルズ)

    【あらすじ】

    幸福の絶頂であるはずの結婚披露宴から失踪し、海に身を投げて突然の自殺を遂げた美貌の医師・佐伯彰。何も告げずに死を選んだ親友を思い、一年もの間苦悩し続けていた早坂は、彰が死んだ海辺で彼そっくりの女『あきら』と出会う。言葉を語らず、無邪気に早坂を慕ってくる彼女をやがて愛するようになった早坂だが、そこに彰の面影を追っていることに気づいた時、明かされた真実とは──。筆者入魂の長編が上下巻で登場!愛する男に愛されたいがために自らの存在をも放棄した男、実の弟に妄執を抱き、禁忌の愛を選んだ男……迷走する彼らの運命を握った小さな命の行く末は!? 綺月陣、幻のデビュー作が大幅改稿でここに完全再生!!(上巻)

    研究の末、実の弟である和巳との間に『胎児』を誕生させた医師・黒崎結城。本人に知らされないまま和巳の体内へと埋められた小さな命は、彼らの運命を思いもよらない結末へと導く―!!そして、その研究を知ってしまった早坂圭介の恋人、彰。最愛の男の妻として新たな人生を歩みながらも、決して彼の子供を得られないという現実がゆっくりと彰の心に影を落としていた…いつしか加速する悲劇の中、迷走する彼らが得た真実の姿とは?表題作他、続編『背徳のマリア〜Mary Magdalene〜』を特別書き下ろしで収録。世界で一番穢れのない罪を描いた珠玉の長編作品、ここに完結―。(下巻)

    日本最大級ネット書店のイーブックオフ

    【感想】

    楽天ブックス

    登場人物の一人が、男性→性器切除→女性→(+α)へと性転換を繰返す作品です。切除ものだと毬谷先生の「この夜の果て」、性転換ものと言えば山藍先生の「愛と憎しみの迷宮(旧題:冬の星座)」を連想しますが、今作の根底には、上記の2作以上に重々しいものがあります。

    以下、苦手な方はご注意下さいませ。

    さて。

    実はこの作品、主要カップルは2組登場します。まずは、著名な大学病院長の一人息子の佐伯彰。そして彰の親友にして恋人の早坂圭介。安藤の同僚意志である黒崎結城と、弟で学生の和巳。2組の間には、口とガラは悪いものの、超一流の執刀技術を誇る医師・安藤仁が共通の知人として存在。裏の主役とも呼べそうな程に重要な役割を担います。

    まずは上巻ですが、前半は圭介×彰の恋人としての馴れ初めから経過。後半では、黒崎兄弟の、特に兄である結城の、和巳への以上な執着愛の始まりが描かれています。

    【人魚の声が聞こえる】

    安藤仁、早坂圭介、佐伯彰の三人は、T大医学部付属病院の元同級生だった。中でも安藤は、教授陣が舌を巻く程の天才外科医として名を馳せていた。その鮮やかなメス捌きに周囲は一目を置いていたが、ただひとり、院長の息子である彰だけが、安藤を目の敵にしていた。慎重派の彰と、行動派の安藤は、院内の誰もが知る程の犬猿の仲だった。そんな二人の唯一のパイプ役になっていたのは圭介。圭介は安藤の良き理解者であり、安藤が公私ともに腹を割って話が出来る唯一の友人だった。そしてその圭介に対し、学生時代から恋焦がれていたのが彰だった。同性愛が理解と常識の範疇を超えていた圭介に、彰の想いが届く事は無い。

    彰は悩み苦しんだ挙句、自分の想いに区切りをつける為、結婚を決意した。しかし、披露宴の最中に自殺をはかった。披露宴から2ヵ月後、海岸沿いで彰の遺体が見つかった。此処には大きな仕掛けがあり、彰本人は死んでいません。披露宴の最中、圭介から贈られた親友としての祝辞の中に、自分を受け入れて貰える可能性を見出した彰は、タイへ飛んで男性器を切除してしまう。彰の帰国後、その事実を知らされた安藤は、彰が更に望む『完全な女体』にしてやるべく、彰の身体に乳房を付け、膣を作り、全身の筋肉と骨を削ぎ落とし、より完全な女性体にする為の大手術を成功させた。尚、この手術には、「生きていてくれれば、それだけで良い」と言う強い親心を持った彰の実父も絡んでいる。彰は男の心のままで、女の身体を手に入れた。

    良くも悪くも色恋沙汰には鈍感な圭介は、彰の失踪から1年後。性転換をして女になった「あきら」と出逢い、親友であった彰とは知らずに恋に墜ちた。「あきら」と「彰」が同一人物だと知った圭介は、そこで初めて、彰へのそれまでの自分の想いが、特別なものであった事を知る。尚、圭介と彰を見守っている内に、安藤は彰の一途さに惚れてしまっています。親友達の恋を見守りながら、静かに自分の想いを隠し続けるポジションです。彰とは敵対していましたが、圭介への一途な想いを知る事で、彰の恋も応援するようになります。尚、ここでの話は「人魚姫」を重ねた形で作られていますが、人魚姫の純粋さが生んだ愚かさと切なさが、彰の心や行動と上手く絡み、物語を際立たせています。

    【体温は証明する】

    圭介と彰が結ばれた後、彰の父親は、愛息の第二の人生の為、北海道に診療所を用意する。圭介と彰は、夫婦同然の医師として、診療所を切り盛りするようになります。更に後日、ある事件に巻き込まれて大学病院を追放された安藤も、居候の医師として滞在するように。そこでの3人の生活が描かれるのが「体温は証明する」。ここでは、子宮外妊娠で胎児を失う女性患者が登場。望めば新たに子供を授かる可能性を持ち、利己的な発言をする女性患者。そして、近隣の幸せな妊婦の、彰に対する残酷な励ましが、彰の心を複雑にさせます。女の身体は手に入れても、命を授かる事が出来ない彰の現実は、彰の心に暗い影を落とし始める―。ここでの内容は、安藤が北海道に来る前に巻き込まれた事件、「背徳のマリア」に登場する黒崎編と繋がります。

    【背徳のマリア(前編)】

    安藤の同僚・黒崎結城は有能な外科医だった。結城には年の離れた弟・和巳がいるが、早くに両親を亡くした為、結城が和巳の養育をしていた。結城は和巳に対して歪んだ愛情と執着を持っていた。和巳もまた、兄である結城を愛していた。相思相愛の兄弟だったが、結城の和巳への想いは歪み過ぎていた。研究の末、和巳との間に『胎児』を誕生させる事に成功した結城は、和巳本人に知らせる事無く体内に胎児を埋め込んだ。圭介と彰に絡んだ過去をネタに脅され、巻き込まれた安藤は、片棒を担がされる。実の兄弟の精子から誕生した胎児は、和巳の腹の中で成長を続けた。和巳は自分の身体に違和感を感じ始める―。

    その後の展開は、下巻に。

    【背徳のマリア(後編)】

    犯罪の片棒を担がされながらも、倫理上の問題、そして和巳の身体を重要視した安藤は、和巳の身体に起こっている現実を、本人に教えてしまう。成長途中の胎児が男だと判り、誕生を待ち望んでいる結城とは対照的に、和巳はその事実に耐えられなくなってしまった。自ら腹を割き、胎児を取り出してしまう。瀕死の状態を救ったのは安藤だったが、和巳との胎児を失った、結城の心は壊れてしまった。無事に生還した和巳は精神面のリハビリを重ねて療養生活を送った後、大学に入学。続編で北海道の安藤を訪れますが、それが要因となり、圭介と彰の関係も変わります。

    少し話が脱線しますが、本編から十数年後が経過した和巳は、「龍と竜〜白露〜」内で、30歳前後で医師免許を剥奪されたモグリの医師・黒崎として登場しています。医師免許が剥奪されていると言う事は、医師になった後、兄の研究に絡んだ何かに挑戦でもしたのでしょうか。気になります。

    【背徳のマリア〜Mary Magdalene〜】

    「Mary Magdalene=マグダラのマリア」。マグダラのマリアについての詳細はこちらをご参照下さいませ(リンク先はwikipediaです)。

    マグダラのマリアと言えば、随分前に女優の加賀○りこさんが、何らかのインタビュー記事で澁○龍彦への言及と共に語っていた事から知ったのですが、作中でも悔悛した罪の女、本意では無い男達に汚されてしまった事を前提にした娼婦、人為的に受精卵を体内に取り込む事を前提にした処女受胎等、幾つかの要素が、綺月先生アレンジで取り入れられています。

    此処では、男の心で女の身体を手に入れた彰が、圭介から愛される為に手に入れた女の身体を手に入れる時に失った生殖能力や、いつかは圭介から厭きられてしまうのでは無いかと言う不安。圭介の子供を後世に残したいと言う願いから、一つの大きな禁忌を犯します。安藤を訪ねて診療所を訪れた和巳と出逢った事や、上巻で登場した子宮外妊娠で子供を失った女性と関わった事等、様々な要因が重なっているのですが、彰の心が重くて痛い。男の心で女の身体を手に入れたが、男女どちらの生殖機能も持たない苦悩。圭介の為に女の身体を手に入れたが、男として愛して欲しいと願う心。色々な思いがない交ぜになった挙句、上巻に登場した子宮外妊娠で死んでしまった胎児の成熟卵子を、圭介と安藤に黙って取り出し、圭介の精子と結んで受精卵を誕生させてしまう。

    「自分の体細胞は含まれていないけれども、自分の体内から栄養分を吸収して育つ事で、自分の遺伝子が伝わると信じたい」

    成功率の低い可能性に賭けた彰は、自分の身体を培養土にする為、たった一人で、自らの身体にメスを入れた。しかし手術は当然のように失敗に終わる。駆けつけた安藤と圭介の手により生還を果たしたものの、子供は勿論着床せず、左半身と脳には、軽い麻痺が残ってしまった。後に圭介と安藤は、「彰が本当に欲しかったもの」を考え、彰の身体を男性の身体に戻した―。勿論、失った生殖機能が戻る事はありませんが、彰は念願だった男性体で、圭介に受け入れられるように。

    あらすじだけをなぞるだけでは、トンキワ作品にしか見えないかも知れませんが、彰の心の変遷や苦悩・葛藤を考えると、重々しく切ない話です。あらすじには「世界で一番穢れのない罪」と書かれていますが、確かに彰が取った一連の行動は、根底にある純粋さが引き起こしてしまった事。一つ一つの行動は、端から見れば常軌を逸した行動に見えますが、彰の必死な心が重く伝わって来ます。

    男から女になる事で男の機能を失い、生殖機能が全く無い女の身体を鎧う事で圭介を繋ぎとめようとした。子供が欲しいと考えた事も、「女としての幸せ」を手に入れる為では無く、圭介の自分への想いを繋ぎとめておきたいと言う気持ちから来たもの。ノーマルな圭介に抱いて貰う為に女の身体に作り変え、圭介の子供を残す事で、子供の母親としてだけの存在でも良いから、自分を捨てないで欲しい。そう言った様々な苦悩が見え隠れをしていて、その健気で必死な様子が哀しい程に痛々しい。その上、彰の精神面に焦点を当てると、完全に男の精神のままで圭介に愛情を向けているのですよね。女の「あきら」として圭介の前に姿を見せた当初は、心の迷いがあって詳細を口にはしませんでしたが、安藤に後押しをされて正体を明かした後には、女性体の身体と心のギャップに苦悩をしながらも、男としての自分を愛して欲しいと必死に願い続ける。

    女性の身体に作り変えた以上、他人と接する際には女性として過ごしますが、圭介や安藤の前では、性転換前と変わらないままの男の彰として接しています。身体は男→女→男と性転換を繰返しますが、内情は完全に男同士の恋愛。元々がノーマルな圭介の、足元の覚束ない不安定な心も、作中の世界ではとてもリアルに感じられます。一途な彰とは違った角度から、男同士と言う事に不安を感じていますしね。彰が受精卵を自分の腹に植え付けようとして失敗した事で、彰に不安な心を持たせてしまった自分に対して責任を感じたり、沢山心を迷わせています。恋人同士として過ごすようになった後の、二人の夫々の不安な心の描写も、男同士の恋愛の難しさを物語っていて重い。

    最後は彰が望んだように、男の身体で圭介に受け入れられるようになりますが、哀しいけれども、とても穏やかで暖かい結末には涙腺が緩みました。

    読後の重々しさから、長らく感想記事を書く事が出来ませんでしたが、漸く完成させる事が出来て良かったです。相変わらずの支離滅裂な文章で申し訳ありませんが、綺月先生の作品では一番好きな作品です。彰と結城の歪んだ純粋さが引き起こしてしまった狂気の恋の他、未成年犯罪、生命倫理等、色々な事柄についても考えさせられます。

    本当に只のトンキワ本では終わらない、「渾身の1作」と言う表現がぴったりのデビュー作でした。

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    背徳のマリア〈上〉 (ピアスノベルズ)背徳のマリア 上
    (2003/08)
    綺月 陣

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    背徳のマリア〈下〉 (ピアスノベルズ)背徳のマリア 下
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