

【あらすじ】
『美男塾でイイ男の極意教えます』
メタボ体型のせい(?)で失恋した先輩に付き合って『美男塾』の見学説明会に参加した上遠野。モテることになんら興味はなかったのに、ある男性講師に一目惚れし、勢いで入塾してしまうが…!?
日本最大級ネット書店のイーブックオフ
【感想】
タワーレコード
小林先生は独特の文章をお書きになる作家さんですね。うっかりしている内に感想も3作目に入ったので、本日から小林先生カテゴリーを増設しました。
早速ですが、おおまかな流れはあらすじ通り。
ちょっとだけ乙女趣味を持つ郵便局員の瑛士は、失恋した先輩・国仲に付き添い、『美男塾』の説明会に参加をする。色々と切羽詰り気味の国仲とは違い、軽い気持ちで参加をした瑛士だったが、美人講師・夏秋に一目惚れ。そのまま勢いづいて、国仲共々入塾。恋愛力、及び自分磨きについてのセミナーを受けつつ、夏秋に近付きたいと考える。しかし公私をきっちり分けている夏秋は、鬼のようにガードが固い。夏秋の牙城を崩す事が困難だと感じ始めた頃、偶然に夏秋の息子・凛と出逢う。この出逢いが瑛士に見方をしてくれる訳ですが、夏秋の職務中の猫被り様と、私生活での鼻っ柱の強さのギャップが良かったですね。(笑)
鼻っ柱の強さは、男手ひとつで必死に一人息子を育てようとする気概から滲み出ているものですが、その荒々しさが好きでした。子供の凛との父子関係が良い事もまた、和みましたねえ。子供ながらに大人びた面を見せる凛と言えば、自分が置かれた環境を理解しつつ、一生懸命に一人前になろうとしている様子が見える。大人びた面が切なく感じられる事もありますが、夏秋とは父子関係だけでは無い、個対個としての関係性も見られて、そう行った部分が幼い頃から養われている事には関心しました。
「友の会シリーズ」も地味に楽しかったですねえ。「私は関係無いわ」と100%の完全否定が出来ない、(誰に対しても可能性がゼロとは言えない)不吉な未来予想図「白骨友の会」にはグっと来ました。作中で国仲が、将来的な自身の「孤独死」に対する不安を謳った表現の一つですが、身につまされるものを感じました。他人の絵空事とは言い切れない不安を、自分自身でも感じていますしね。例えば今の生活が安定していたとしても、明日の平穏が100%保障されていないのが今の世の中。常に某かの不安を感じる事が多いのですが、「白骨友の会」は殊にリアルに感じられました。「大げさな・・・!」と笑ってしまう反面、直後に「しかし、将来的にはありえる話かも知れないわ・・・」と落ち込みましたもの。
作品全体としても、コメディーと言うかコントのような「笑える展開」の中には、見過ごせない現実の皮肉も取り入れられているから堪ったものではありません。笑ったり反省したり不安を感じたりと大忙しでした。(苦笑)瑛士が発起人となる「純潔友の会」、基、「絶倫友の会」等、バカバカしさの中に、ちょっとの真剣味が感じられる友の会には純粋に笑わせて頂きましたが。(笑)
因みに私は、「不味美味(まずうま)グルメ友の会(別称:B級グルメ友の会)」に加入しています。「不味そうに見えて美味しいもの」に出逢う事が理想ですが、大半は見かけ以上にブッ飛んだ味に卒倒するばかり。誰も知りたくない情報を、訊かれもしない内に勝手に答えていますが(すみません)。
そんな話は兎も角。
肝心の『美男塾』ですよ!イケメン養成所、若しくはモテない男救済機関。「モテない男をモテる男、自身を持つ男に改造しようぜ」をコンセプトにした、とても判り易い塾なのですが、セミナーそのものは突っ込み所だらけで楽しい。しかしその反面、3次元の現実や皮肉もてんこもり。例え抵抗を感じたとしても、「平均」に乗っかる為には意識的に取り入れた方が良い雛形の羅列は見事でしたねえ。
「闘わない組を自称しつつも、勝ち負けを気にしてしまう」。ある種の「
江古田ちゃん気質」を持ち合わせている自覚がある私は、時々には「痛烈なしてやられた感」を覚えてしまいました。一言で言えばアレですね。「猛禽(狙った相手は確実に落とす。代表的なものは巨乳・天然・ドジっ子。話の聞き分けが良く、どの仕種も可愛らしい。異性からの(場合によっては同性からも)受けが良い)が嫌いなのに、猛禽を見習わないと、色々な事柄の成立が難しい現実の再認識」ですね。
実生活のイヤンな部分を、これまたイヤンな形で、しかもリアルに触発されて、更にイヤンな気持ちになった事は、実は何度かありました。うっかりしている内に、自己嫌悪に耽る事も屡ありましたよ。セミナー参加者が講師陣から指摘を受け、改善を促されているポイントが、自分にも当て嵌まってしまう事も多々ありましたからねえ。しれえ〜っと恐ろしいですよ、この作品。
とは言え、作品全体を通してみると、セミナーのシーンが長い。講師陣の論舌も長い長い。(笑)何せ作中で登場するシチュエーションの大半は、美男塾でのセミナーばかり。確かにセミナーの内容を具体的に知る事は重要だと思うのですが、登場人物達が、セミナーで吸収した内容を実践している日常の様子が沢山見られると良かったですね。夏秋を根負けさせる程の、瑛士のストーカー紛いの熱心さには、セミナーの成果が表れていましたが、全体を見るとやはり少ない。(苦笑)
小林先生の作品は、登場人物達が人を食ったような会話(この辺りは樹生先生の作品でも見られますね)を展開する事が多くて楽しいのですが、個対個の会話以上に、セミナーの説明シーンが多かった事は少々残念。セミナーが前面に出過ぎてしまって、主人公達の恋愛進行が突貫工事的に(進展過程が上手く掴めない状況の中)急激に纏まってしまいましたから。その上、脇役で登場する成金塾頭・箭内のインパクトが凄過ぎました。メインカップルの存在感が食われています。(笑)
否、これはこれで面白かったのですが、破天荒過ぎる人生や、謎を多く感じる人間性は怪しくて強烈過ぎました。気付けばメインカップル以上に気になる存在になってしまいましたよ。作中で何かと目をかけていた塾生・碧海との間で、今後は恋愛関係が発生するのか否かも気になります。作中で碧海は、瑛二に告白をして玉砕しましたが、是非是非箭内には、傷心の碧海に付け入って頂きたい(希望がろくでなしですみません)。否、「傷心の碧海に付け入って食う予定」はあったようなのですが、具体的には触れられずに終わってしまったので。(笑)
人生も人間性も破天荒な美中年が、どう行った形で碧海を落とすのだろうかと考えると、異様にテンションが上がって仕方がありません。訳解らんような大き過ぎるスケールで、碧海を甘やかし倒して頂きたい。箭内が主役の続編が登場すれば、確実に買ってしまいそうです。
等と思いつつも、あの掴み所のないままで、(特定の恋人を持たずに)フラフラと破天荒な人生を突っ走って欲しいとも思ってみたり・・・。(笑)
気付けば毎度のように支離滅裂な文章を展開してしまいましたが、これまでの花丸文庫からは想像が出来ない文章密度・台詞密度の作品に出逢えて新鮮でした。小林先生の作品は、寿限無寿限無・・・のように、一つの事柄に対して執拗に長説明をする独特の文章リズムがあるのですが、イチイチ面白さを感じます。始まりと結果を説明するだけなのに、一つの文章内に近道+遠回りな表現が混同している事があるのですよねえ。簡潔なようで眼暗ましを喰らったり、眼暗ましに見える文章が、実は簡潔な内容であったり。上手く説明をする事が難しいのですが、幅広い意味合いで個性的。
非現実を楽しむBL世界のファンタジーを追求する一方で、隣の芝生ではありませんが、自分に無いもの程良く見え、求めてしまう人間のジレンマが、喜劇的な表現の裏に生生しく張り付いていた気がします。 非現実の笑いと現実の皮肉を紙一重、それこそ首の皮一枚で繋げているような状況で引っ張り続ける手腕もお見事。
パンチの効き過ぎた個性を生かして、このまま突っ走って頂きたいものです。
美男の達人(amazon.co.jp)

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