【あらすじ】
『―真田邦彦を殺せ』
政界の大物岩倉清一郎の命が闇に放たれ、影に潜む男たちが行動を開始した。日影成璽は、真田暗殺がすすめられていることを知り、そしてその命令を下したのが自分を溺愛する兄の岩倉と知ってショックを受ける。さらに、真田と引き離すために日影のかつての恋人、西園寺哲也がアメリカから呼び戻されてきた。時を同じくして、日影の回りを嗅ぎまわるルポライター三木靖彦の出現。昼と夜の顔を持つ美貌の刑事、日影成璽と真田邦彦の愛は破局へ向かうのか・・・。山藍紫姫子幻の大作、第一部完結。
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【感想】
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「
夜想曲」、「
棘のある木」に続くシリーズ三作目、第一部完結編です。
相変わらず、日影の荒淫も激しいです。
さて。
「夜想曲」に登場した鬼頭茉莉子に鬼童。日影を追い続けるルポライター・三木靖彦。更には「棘のある木」に登場した西園寺も再登場。
作品の展開は益々混沌として参りました。
日影は真田への愛を自覚し始め、真田は日影に対し益々愛を深めるが、日影の周囲からは好意的に受け止められる事はない。日影の実兄達、そして日影に近い人間である鬼頭茉莉子達は、日影と真田を引き離そうとする。しかし二人は、引き離されようとする程に絆を深めた。
日影の実兄達においては、自分達の意向を無視して刑事になった日影を良く思わず、今後の日影を長兄である岩倉の「後継」として据え、政治を支配しようと画策し始めていた。
しかし日影の身体に異変が起こる。三木靖彦が無自覚に祠から開放してしまった「霞童子」が日影に入り込み「転生」を始めたせいだった。
病院に運ばれた日影から採取された血液からは、獣の血が混ざり込んでいた。
同じ頃、鬼頭茉莉子達は真田を調べ上げた。「霞童子」として転生をする成璽と惹かれ合う真田は、日之影一族の未来永劫の怨敵・九龍光興の転生だった。
「血の記憶」から逃れられない日影と真田が惹かれ合うのは無理の無い事だったが、日之影の民にとっては、現代に一族の再興を計り、「闇に葬られた神」を復活させる事が最優先事項だった―。
色々と詰め込まれ過ぎていて、脳内で整理をするのが大変。(笑)
真田の暗殺命令、予期せず開放されてしまった「霞童子」の、「闇を継承する」日影成璽への「転生」。日影と惹かれ合う真田は、日之影一族の怨敵の転生。日影とは「血の記憶」で惹かれ合うものの、交わる事を許されない立場にある。刑事である日影を「後継」とし、「闇に葬られた神」の復活を求め、一族を復興しようとする実兄や茉莉子の不気味な存在感が、ある意味では「
邪神記」のような、スケールの大きい呪術・因習対戦も連想させます。
今後は、日影達「日之影」のように、真田の親族にも鬼頭茉莉子達のような、日之影に怨恨を傾ける人物が登場するのでしょうか。
日影の兄達においては、「霞童子」の転生・成璽を使って政治の世界を揺るがす勢いを見せていますし、「闇に葬られた神(これが「夜叉王」なのでしょうか)」の復活が実現すれば、神VS鬼を軸にした「和物SFスペクタクル(「帝都物語」か?)」に発展するのかも知れません。
「邪神記」もスケールが大き過ぎて物凄い事になっていましたが、こちらの「闇の継承シリーズ」を纏め上げるならば、この際なので、「邪神記」以上のスケールでお願いしたい所。(笑)
更には今作により、日影と真田の愛は深まっていますが、それ以外、主に血筋や祖に纏わる因習関係は、殆んどが伏線的なもののように描かれているので、「あの展開はこうだった」と回答を見つけ出すのは少々難しい。
そしてすっかり「幻のもの」となりかけている、第二部第一巻としての第四巻、若しくはシリーズ完結編となりそうな第四巻「夜叉王」の予告。
こちらがまたとても大味で、個人的には是非とも手に取りたい内容になっています。
『光は、この世の闇の、その奥深さを知るためのもの・・・』
混沌の太古より闇を支配する禍星の神、天之闇戸神(あまのくらとのかみ)の血を継承する美貌の刑事日影成璽。彼を愛する同僚の真田邦彦は、その一途な愛ゆえに日影の兄たちに命を狙われることになった。しかし、兄たちの妨害が、逆に日影成璽に自分の本心を気付かせてしまうことになる。
しかし、互いの愛を確信しあったときに、はるかな血の記憶までもが蘇った。日影成璽に憎しみを燃やすルポライターの三木靖彦は、『日之影一族』の呪いの発動によって死の恐怖にかわれながら日影をつけねらう。
魔性の女、鬼頭茉莉子の正体は。
思いがけぬ真田邦彦の前世が、闇に葬られた太古の神の復活を目論む男達の妨げとなり、やがては日影成璽をも滅ぼすことになろうとは。
そして、三木靖彦の銃弾は日影成璽に向けて発射された。
その時、調停は崩れた。
因果が崩壊する。
霞童子の子を身籠もるのに成功する茉莉子。
宇宙の星がその配置を変える時。
愛という名のもとに、二人の運命は重なりあい、だれかが滅びなければならないのか・・・。
これが予告として出されているものの全文なのですが、「この先どうなるのか、どうやって辻褄を合わせりゃいいのか、実の所、山藍にも判りません」とした山藍先生の添文があるのですよね。
そして添文通りにその頃の混沌を引き摺っていらっしゃるようで、未だに「本編」は発表されていません(泣)。
日之影一族だけではなく、西園寺や三木といった人物達も、作品に対しての必要性があるから伏線要員として登場しているのでしょうし、間接的に日影や真田に関わるこの人物達がどう作用するのかも気になります。
設定を増やし過ぎても(一応は)完結した「邪神記」の例もありますし、是非是非完結をさせて頂きたい所。
一日でも早く山藍先生に、再びの「憑き物」が降りる事を祈っています。(え?)
このシリーズに関連する話題としては、「夜想曲」に収録された作品が文庫化される予定になっているようです。大幅な加筆修正が入るようですが、「夜想曲」だけとは言わず、「棘のある木」や「歪んだ真珠」までを復刊し、全編書き下ろし新刊として「夜叉王」を続刊して頂ければ嬉しいです。
第一部は今作、「歪んだ真珠」で完結していますが、そちらこちらに伏線(しかも面白そうなものばかり)を張り巡らされた状態で放置されるのは辛い・・・!
最後に余談ですが、この所集めている榊原姿保美(史保美)先生の作品で「黄昏のバイヨン」と言う作品があります。今後読もうと積んだままで内容は把握していませんが(すみません!)、収録されている作品の章タイトルには、山藍先生の闇の継承シリーズでも触れられていた、「歪んだ真珠」や「酒呑童子」と言ったものがあります。
「酒呑童子」も「歪んだ真珠=バロック」も、色々な作品で題材にされているものなので、それ程の珍しさは感じませんでしたが、1990年代前半の耽美作品では、「多く求められた」題材なのでしょうか。
その辺りの事を考えると、山藍先生や榊原先生の作品以外にも、この二つのキーワードをテーマにした作品があるのでは?と思いました。
今後、遭遇する機会に恵まれましたら、夫々の作品を比較してみたいものです。
「酒呑童子」も「歪んだ真珠」には、諸説が沢山あって面白いのですが、「歪んだ真珠=バロック」の諸説の中に「多少グロテスクで懲り過ぎている」と言う見解があるのを目にし、何とは無しに耽美世界との符号を感じてしっくり来てしまいました。
確かに耽美は、多少グロテスクで懲り過ぎています。
そんな所も魅力のひとつだと思いますが。(笑)
【以下、後日追記の私的忘備録的余談】
先日、ちょっとした事で、かの有名な遺言を残した方の本名を知る機会があったのですが、その方の本名は、「日影成璽」の「平仮名読みが同じで当て字違い」と言うものでした。
私が今まで気付かなかっただけで、山藍作品のファンの方には知られている事実なのかもしれませんが、もしかしたら山藍先生、「その方」の本名から「日影成璽」を誕生させたのでしょうか。
しかも、生前の「その方」の当たり役は、有名過ぎる程有名な作品での刑事役。
偶然か、「日影成璽」も刑事。
事実は山藍先生が知るのみなのかも知れませんが、「偶然の符号」は「意図的な符号」なのかしら?と、妙に気になり始めました。
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