

【内容紹介】
1994年白夜書房からハードカバー版で出版された後、1999年にコアマガジンのバニラ新書から、「山藍紫姫子官能の復刻シリーズ」として復刻された作品。幻の時代エロス。完全復刻。
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【感想】
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昨日の「
LOOP」に引き続きまして、今回も執着物です。「LOOP」では肉体は滅んでも、魂は成仏せずに、前世と現世と、次元を超えて思いを遂げると言うものでしたが、こちらの作品では、肉体も滅ばなければ、魂も成仏しません。殺されても死にません。
生き続ける事で執着を達成し続ける作品。しかも江戸SM。現時点で「危険だわ…。」と思われた方。その直感が大当たりと言う展開になると思いますので、お逃げになって下さいね。
【上巻】
畜生!お前ぇの中には、魔物が棲んでやがる―。江戸で一、二を争う商人の娘・お澪は、ある日、謎の美剣士・沙門に命を救われた。沙門に恋をした彼女は、彼の住む廃寺に押しかける。が、そこで沙門と怪僧・鉄が共有する、高貴で美しい「性奴隷」弁天の存在を知って、驚愕する。しかも弁天は男だというのだ!どんなに夜乱れても、朝になると慎み深く蕾んでしまう弁天の花。沙門と鉄は、狂ったように弁天を犯してしまう。「沙門様!私を見て!」お澪は、恋敵・弁天を憎み、嫉妬した。そして弁天が家老の息子で、沙門とは敵同士だったこと。決闘で沙門に敗れてから、沙門に飼われていることを調べ上げるのだったが・・・。
【下巻】
誇り高き武士が、商家の妾に身を堕とす―。荒れ狂う愛の交歓の果て、仇・沙門とようやく心が繋がりかけた麗人・弁天。だが、沙門に横恋慕するお澪のせいで、罠に落ちる。
お澪の父で、江戸の豪商・宗左衛門が弁天を捕らえたのだ。そして弁天は「尻妾」として奥座敷に囲われることに…。でも弁天は沙門を忘れられない。宗左衛門に思うように弄ばれ、達する時にも「さ…沙門…っ!」と叫んでしまう。怒りのあまり宗左衛門は、付け過ぎると気が狂うといわれる、禁断の媚薬「青媚」を遂に弁天に塗りこめるのだったが…!?江戸SM小説の頂点、ここに完結!
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雨月物語の蛇性の婬。そして「娘道成寺」の要素も絡めつつ。更には弁天に沙門。弁財天と毘沙門天のご夫妻がモチーフとなっていたり。この辺りからして、既にパンチが効いています。男性からも支持を得たBL(官能小説寄りですが)と言うのも珍しいかと思います。それにしても山藍先生。相変わらず凄いですね。
当然の如くの3Pやら。(実際は3P以上のプレイもありますが)あれやらこれやらそれやらノーマル(受が女性に犯されます)やらとてんこもり。「江戸SM小説の頂点」だそうです、毎度の事ながら、完敗です。
さてさて。
「蛇性の婬」と題された上巻。「青蛾」と題された下巻から成り立っている今作。登場人物は然程多くないものの、ストーリー展開が複雑に入り組んでいて、簡単には説明のつかないものとなっております。説明を極力簡略化する為にも、先ずは登場人物についてを紹介させて頂きます。紹介文を入れる事で、少しは話が見えると思いますので。
【弁天(総受)】
本名は、佐久間勘解由(かげゆ)。元は松代藩の家老の嫡子。許婚を沙門に奪われ蹂躙しつくされた挙句、許婚を使い捨てた後には、自分自身も弄ばれる事になってしまった総受。沙門により、背中に「女陰弁財天(文字通り局部が丸出しになっている弁才天)」の刺青を入れられてしまった。元は家老の息子で武士だった美貌の男。松代藩が取り潰される事になった要因を作ってしまった為、流浪の身となった、藩の武士達に厭われている。許婚も奪われ、女を知る前に沙門と鉄の慰み者になってしまった。お澪に童貞を奪われた際には、怒り狂った沙門により、仕置きと称して右乳首に金の輪を嵌められてしまいました。
【沙門小次郎(攻)】
元は広義の隠密。要人暗殺を専門に命じられていたが、刃を交えて、斬ったはずが、殺せなかったひとりの男(弁天)のために、職を辞し、無頼の徒に下った。現在は、不老不死の破戒僧である鉄と共に、金で殺しを引き受けている。弁天を不老不死の体にして欲しいと、鉄に頼んだ事もある為、弁天の体も与えている。弁天とは、「憎しみ合う」絆で結ばれております。
【鉄(もう一人の攻)】
本名は、鳳巌。念法寺の先代住職の息子。「鉄」と言うのは、股間の一物が、鉄製のようだという所からついた異名が、そのまま通り名になった。父親の特殊な血を受け継ぎ、不老不死の身でもある。
この鉄と交わると、不老不死になれるらしい。父親である法仁は、僧侶でありながら魔道に通じ、魔界の力で延命の法をおこなったと噂される怪僧。不老不死の身体をに入れてから、法仁は檀家の娘を手当たり次第犯し、その一人から生まれたのが鉄である。ある日天罰が下ったのか、不老不死であるはずなのに、落雷で死亡。それ以来、念法寺は廃寺となり、沙門達の塒となった。沙門と弁天をシェアしいますが、「女は子を生むので厄介」と厭い、弁天を蹂躙する破戒僧。
沙門と共に、金で殺しを請け負っております。
【お澪】
江戸の豪商・吉野屋の一人娘。街中で男達に嬲られそうになるも、沙門に命を助けられる。(沙門としては、吉野屋の主人に、娘のボディーガードとして雇われていただけ)その際に、沙門に一目惚れをし、以降はストーカー同然で、高頻度で沙門達の前に現れます。後に、沙門に抱かれたいのに抱いてもらえないからと弁天を妬み、処女(おとめ)でありながら弁天の貞操を奪うと言う暴挙に出ます。役者の男を夫にし、大店の新造となった後も、沙門へのストーキングは続行します。まさに、蛇のような執念の女。時々は、あまりにも酷い目にあっている弁天を庇護しようともするのですが、沙門絡みの話になると嫉妬をしてしまって、弁天を(プレイ面で)攻める事も。
弁天は、女性を相手にしてさえ「受」を死守する事になってしまいます。
【吉野屋宗左衛門】
お澪の父。本名は根来銀治。元は公儀の隠密を経た後、凄腕の夜盗になっていた。十八年前に仲間を裏切り殺された事になっているが、色々な事を経て、現在は吉野屋の主人に納まっております。娘と同様に、弁天にも手を出すエロ親父です。下巻では、自分の妻が亡くなった後、弁天を尻妾から後妻にしようと画策します。
この辺りが主要キャラとなりますが。軽く齧る程度の説明をするだけでも、いっぱいいっぱいになって参りますね。
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作品の設定は享保二年(1717年)の江戸。八代将軍吉宗によって統治されていた時代となります。
当時の江戸では、15歳以上の女性は、男性の数よりも25万人も少なかった時代で、希少価値のある女性は、それだけ男に対して強く振るまえる時代でもありました。その時代の豪商・の吉野屋の娘として生まれたお澪(16歳)もまた、大店の箱入り娘として、習い事や観劇等をしつつ、過ごしておりました。
ある日お澪は、縁結びで名高い永善寺の祭りに、お供のお万を伴って出かけます。そこで「たかり」の牢人モノに言い掛かりを付けられてしまいます。更には、お供のお万と共に、牢人の仲間達に乱暴されかけていた所。美剣士である沙門小次郎に命を救われます。一目惚れをしたお澪は、ストーカー同然で、高頻度で沙門達の前に出没します。沙門が弁天を弄ぶ姿を見ても諦めません。好きな男(沙門)に抱いて貰えないからと言って、その男が抱いている男(弁天)を妬んで襲ってしまうと言う辺りは凄いです。
処女が童貞を犯すと言う構図になりまして。
童貞を奪われた弁天の方が、処女を奪われて傷ついた乙女のようになっております。ここまでやって頂けると、もう笑うしかありません。(否、内容は全く笑えないのですけれども)ハードプレイの連続と、大味な展開が続くにも関わらず、作品の高クオリティが維持され続けているのは、山藍先生流石の手腕。メイン(沙門が弁天の美貌を維持させて置きたいが為に、鉄とも交わらせて不老不死の体にしたいと言う辺り)を見失いそうになる程に、濡れ場だらけで話が展開されるのですが、萌えはしないが、驚きの連続です。
男女を問わずに攻め抜かれる弁天が凄い。「
獣」の蟲姦(蛭)プレイに怯んでいる場合ではございませんね。
こちらの作品では、泥鰌・・・(以下略)。
呪われた不老不死の血を持つ鉄と交わる事で、弁天と共に自らの身体を不老不死にしようとする(ふしが見える)沙門。沙門と鉄の、弁天への執着。そして、沙門を追い続けるお澪の執着。合い間合い間に、様々な事が起こりますが、基本的には。延々と続く執着物語。
永遠の幸福と取るか、逃れる事の出来ない生き地獄となるか。鉄を解して不老不死となり、全員が呪われた血を持つ事となった三人は、生き続ける事となります。執着の煉獄からも逃れられません。
更には、この作品。ちょっとした後日談があるんですね。作中で、「愛とは、人を強くするもの。なれど、その愛ほど、永く続かぬものはない。これが憎しみであれば、それは永久(とこしえ)のもの。愛を憎しみに変じて、愛しきお方を追って行くのでござりまする」このような発言を残しているお澪についての後日談が。
弁天や沙門に去られ、時に取り残されてしまった後には、同じ立場である自分の父親と交わり、更には子を残すのだそうです。そうして、その子孫達が弁天と沙門を追い続けます。ある意味では、木原先生の「LOOP」に通じる執着劇が設定されているとの事。
未来永劫続く執着。「終わりの無い執着」と言う点では、「LOOP」以上に厄介なのかも知れません。
これこそが、「長恨歌」であると言う所以なのでしょうけれども、これだけの大味な作品を、質を落さずに書ききってしまう山藍先生の手腕には驚かされるばかりです。
ハード・コアなエロスにばかり注目が集まりがちですが、登場人物の配置や、心境を考えると、行動の裏側には、切なさや葛藤が見え隠れしておりますし、一言では語りきれない複雑な要素が絡んでいます。BL作家と言う枠を越えて、「官能小説の女帝」と評される事も頷けます。どれだけハードなエロスを取り入れたとしても、それ以上に作品そのものの深みと凄みが存在しておりますしね。
その辺りが、私が山藍先生の作品を読む事を止められない要因でもあります。
機会に恵まれれば、白夜書房から出版された、ハードカバー版も目にしてみたいものです。
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